マーラー・ユーゲントオーケストラ・ジャパン第1回公演

少し間が開いてしまったが、マーラー・ユーゲントオーケストラ・ジャパンの第1回公演について。

マーラー・ユーゲントオーケストラというと、アバドが指揮をしているユースオーケストラというぐらいの認識だったが、改めて調べてみるとこれはヨーロッパ各地の若い演奏家からなる団体で、ウィーンに本拠地があって、すでに40年近い歴史がある。

マーラー・ユーゲントオーケストラ・ジャパンはその日本支部とかそういうわけではなく、フルート奏者である大教大の中務晴之先生と指揮者の河崎聡さんを中心に、マーラーを愛する思いのまま結成されたオケだそうだ。大阪教育大学シンフォニーオーケストラの団員の皆さんが中心ということになるのだろうか。

その第1回演奏会が、マーラーの誕生日である7月7日、シンフォニーホールで開催されたのを聴きに行ったのだが、背景を知っていて狙っていったわけではなくて、マーラーかショスタコーヴィチか、久々に生で聴きたいなと思って検索していて、偶々見つけたのだった。

安楽椅子探偵という言葉があるが、私は安楽椅子リスナーとでもいうべきもので、クラシックもロックも聴くがコンサート、ライブに行くのはあまり好きではない。落語だけは進んで生で聴きに行くのだが、それはパッケージソフトの選択肢が少ないからだろうか。
クラシックのコンサートはたいてい寝てしまいそうになるし、ロック系は椅子から立ち上がらねばならないような同調圧力とでもいうものが蔓延していて疲れる。古今の名演奏名盤を家でも電車の中でも好きなように聴けるのだからそれでよかろうという考えだ。

だが、ライブの一期一会の感銘感動というのを否定するつもりもなく実際に素晴らしい体験もあるので、偶にはと思って検索はするのだが、そうそう足を延ばそうと思えるほどのものはない。

ではこの公演になぜ目がとまったかというと、ひとつにはチケットが驚くほど安かったから。そして、長く大阪に住んでいるにも拘らずシンフォニーホールには行ったことが無かったから。マーラーの5番と吉松隆の小品というカップリングが面白そうだったから。それに何より、井上道義さんのショスタコーヴィチ全曲演奏会のCDに納められている千葉県少年少女オーケストラの録音や、東京で同じく道義さん指揮で聴いた音楽大学フェスティバル・オーケストラの演奏だったりで、何かエネルギーに満ちた若い人たちの演奏にはそこにしか生まれえない魅力があるように感じているから、でもあった。(もっともユーゲントオーケストラと言っても、大フィルの首席奏者クラスの方や、音大の教授が混じっていらっしゃる。とはいっても平均年齢はかなり若いオケなのだろう)

そしてこの演奏会は、まさに、清新な響きに満ち、正直なところ、これほど感激したライブというのはいまだかつてなかったかもしれないと思うほどに素晴らしいものだった。

二回の最前列ほぼ中央という、オケ全体がしっかりと見渡せる席だったことも良かったのだろう。緊張、あるいはこの大曲に挑む冒険心、あるいはやってやるぞという気迫、見事なアンサンブルに身を置く高揚感といった、奏者の皆さんの表情まで見て取れるようだった。トランペットやホルンのソロの場面では、見事というよりは頑張れという思いで奏者を見つめながら、なんだか感情移入して聴いていた。

こちらが老人と呼ぶべき年代に入っている所為かも知れないが、フィナーレの瞬間はなぜだか感激のあまり涙が滲んだりして、自分で自分に驚いた。次の演奏会が楽しみだ。

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