吉坊わさびなんでやねん2
阿倍野のSPACE9で開催される、 柳家わさび師と桂吉坊氏の二人会、第2回。
わさび師は開催の3日前に、吉坊師と吉田食堂さんにあてて「明日はよろしくお願いします」と連絡をしたと言う。Xでも呟いておられたが、当日のマクラでも触れられていた。前日17時間も寝ておかしくなっていたそうだ。
また、前回会場ではタイトルが「吉坊わさびのなんでやねん!」となっていたが、わさび師が作っていると思われるバナーでは「吉坊わさびなんでやねん1」「吉坊わさびなんでやねん2」となっていて、微妙に違うのも気になる。
そんなこんなで、前回の当日のトークショーの仕切りなども含め、粗忽というほどではないのだが、逐一何かがおかしいのだ。
この会は前座さんの開口一番はなくいきなり始まる。今日は吉坊師からで、中入りのトークショーにて観客から「なんでやねん」と思うことを募って紹介するのだが、その募り方が1回目からなぜか変わったというあたりの、わさび師の段取りの不思議なところやら、同日開催初日の大阪・関西万博に触れたりしながら商売の話に移って、「天狗さし」あたりだろうかと思っていたら「鷺とり」。東京の落語でもまだまだ知らないネタがあるのだが、上方落語はさらに不勉強なので初めて聴いた。
金儲けネタの小さな話から予想外にスケールが大きくなったかと思えばそこからの下げはずいぶんと非道いもので、ちょっとびっくりしたのだがこれは昔のカタチらしい。花粉症の薬が切れてお辛そうではあったが、さすがに吉坊師はうまい。
代わってわさび師、「団子坂奇談」。ところどころに溜めを利かせ、表情も豊かに、落ち着いて演じきった。東京の寄席ではよくかかるネタだろうから、すっかり懐に入れておられるのではないだろうか。素晴らしかった。
そして、恐ろしい噺なのだが、その恐ろしいことの因果関係も何もかも解決もしなければ探ることすらしないまま打っ棄って強引に下げてしまう、考えてみれば結構無茶苦茶な噺で、シュールですらあるのだが、それが吉坊師の「鷺とり」の下げとうまく呼応していたようにも思える。狙ったのだろうか?
中入りのあとのトークショーは、前回と同じく客席から集めた「なんでやねん」を紹介するもの。集めて紹介してどうするのか、といったあたりが今一つ詰められていないところが妙に可笑しい。そんなやり取りの中でさりげなくわさび師に「なんでやねん」と突っ込む吉坊師は流石。
続いてわさび師の二席目は「キカイ島」。これも良かった。自作の新作は堂に入っているといってよいのではないか。
そして吉坊師、このネタの後に何をやればよいのか…と言いつつ、物の価値の話が始まり、これは「はてなの茶碗」かなと思ったらそうだった。40年ほど前にテレビで見た米朝の高座がこのネタで、今もCDからMP3に変換して通勤の行き帰りにちょくちょく聴くネタだ。
そういえばトークショーで吉坊師が「団子坂奇談」とその上方版である「腕食い」の違いを話していて、上方は侍が出てこないと。なるほど東京の落語で茶碗といえば「井戸の茶碗」だろうがあれも侍の話で、ストーリーは全く違うけれど商人しか出てこない「はてなの茶碗」との対比は、そのまま江戸落語と上方落語の対比になっているようにも思える。
面白くもあり、なるほどと考えさせられるところもあり、非常に充実した会だった。
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