村社会化した怪談界隈は一回滅びてもよいかも。

 怪談、オカルト界隈に関しては、古くはインターネット初期に「あっちの世界ゾーン」を読みふけり、その後2ちゃんねるの所謂「洒落怖」をまとめサイトで読むようになり、ずっと怪談の実演には興味がなかった―稲川淳二の語り口調がどうにも聞き取りづらくて苦手な所為もあるかもしれない―が、たまたまYoutubeで「OKOWA」と出会ってちょっとはまってしまった、という程度の付き合い方。

その後、OKOWAに出ていた方のYoutubeチャンネルなどを見聞きするようになったのだが、ここ1~2年で、オールドメディアが取り上げる頻度が上がってきたと感じる反面、早晩終わるのではないかとも感じている。

この界隈を終わらせる要因の第一弾は、人気ユニットの都市ボーイズがやらかした「呪いの木札」事件だと思っている。東日本大震災を扱ったドキュメンタリー映画の来場記念品として、復興を祈り作られ配られた木札を、その来歴も調べぬまま呪物扱いし、大ヒットした「祝祭の呪物展」に「呪物」として展示していたのである。当事者の謝罪で何となく終息したが、有料の展覧会に出していたのだから、詐欺罪の適用ができるのではないかと思うがどうだろう。Xで至極真っ当な意見を述べた「怪談恐不知」のイワオ☆カイキスキーさんが都市ボーイズ側についた怪談村の連中から攻撃されたのも他人事ながらどうにも不愉快に感じる。

その次が、「インチキバスターズ」の皆さんが暴いた「暗夜」の、これも詐欺ではないかと思う一連の怪しいビジネス。古くてちょっと荒れた感じの一軒家を借りて、殺人や自殺があった「いわくつき」の物件だと嘘をつき、いわゆる心霊現象が体験できるかもしれないとの触れ込みで、高額な宿泊料をとっていたものだ。周辺住民への聞き込みで物件にはいわくも何もないと判明、宿泊者が聞いたラップ音は「暗夜」のスタッフが外から壁に石を投げつけたりして起こしていたものであったりと、これも詐欺にあたらないのか不思議に思う。

次いで、映画「三茶のポルターガイスト」シリーズで「本物」として紹介されている「ヨコザワプロダクション」での心霊現象。これも「怪談恐不知」さんたちの動画など見る限り作りものであることはほぼ間違いないだろう。

と、ここまで下書きしてしばらく放置していたら、「事故物件住みます芸人」の松原タニシさんが実際に起きた凶悪犯罪事件の現場を「事故物件」として動画で取り上げていることに対し、事件の被害者のご遺族からクレームがついていながら数年来放置しているという話が浮かび上がってきた。

12月5日、詳しいいきさつかはわからないがYoutuberの懲役太郎さんがご遺族の知人から相談を受けて、松原タニシさんにご遺族の声を聴くよう訴える動画を公開したのだ。

怪談界隈では「呪いの木札」の時と同様、「怪談恐不知」さんだけが真っ当な警鐘を鳴らし、Xで見る限りそれなりに名の知られた方が数名追随したが、大勢はダンマリ。しかし影響力のある懲役太郎さんなので、怪談・オカルト界隈の村社会の外から注目を集めることとなり、数日を経て12月9日に、松原タニシの所属事務所の松竹芸能が当該の動画をYoutubeチャンネルから削除(あるいは非公開)しWeb上でリリースを出すに至った。

私は松原タニシさんの著作は面白く読ませてもらっていて、今回の件で改めて「恐い間取り」の一作目に目を通してみた。

・物件は事件に関心のある人ならその現場とわかるのかもしれないが、同じ府に住んでいながら私にはわからなかった。事件のことを覚えてもいなかったので当然か。

・被害者の年齢、性別、人数等にも全く触れていない。

・この物件での松原タニシさんの体験としては、人か霊かわからない男が現れたこと、ラップ音、映像にオーブやおかしな光が映ったこと、物件の前の道でひき逃げにあったことなど記されているが、事件の被害者が霊として現れるといった記述は全くない。

・同物件にかつて住んでいた人物の談話の中で、「女の霊」が出てくるが、それは事件以前の出来事である。ただ、記述の順序によってこの時系列が誤解され、女の霊が被害者を指すと誤認される可能性はあるかもしれない。

と、ご遺族の立場ではないのでわからないが、本についてはそれほどご遺族を傷つけるような要素は感じられなかった。

しかし、この本を原作として映画が作られ、また、松原タニシさん自身もオンラインの怪談番組、イベント、コンテストなどでこの話を語っている。その中では、ウケを狙って細部が変容していることもあったかもしれない。

特に映画「事故物件 恐い間取り」においては、原作本の大したことは起こらず淡々とした中で人の死というものに思いをはせつつどこかしら狂気に侵食されていくような静かな展開とは全く異なり、役者が演ずる幽霊があちこちに登場し―クライマックスでは霊と戦うというとんでもないバカ映画に仕上がっていて、エンターテイメントとしてもかなり質が低い(演出や演技が悪いのではなく脚本がおかしいのではないか?)のも問題だが―原作本の情報と合わせてあそこに出た霊が被害者だな、と決めつける人がいてもおかしくないつくりになっているように思う。

映画を見返してみると、問題になっている「1件目」の物件、本の描写そのままではなく、加害者を想起させるバールを振りかざす男の霊と、被害者かどうかはわからないが女の霊とが登場するので、後者を被害者の幽霊と見なす人がいてもおかしくないだろう。

この件が4本目の矢となって怪談・オカルト界隈が瓦解するのか切り抜けるのか。村社会化した怪談界隈には嫌悪感を抱くようになってきているので、冷たい眼で眺めている。

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