復刻版「書を捨てよ、町へ出よう」。

「書を捨てよ、町へ出よう」は、寺山修司が1967年に出した本である。

映画化もした同名の芝居があるが、内容は関係ない。いや今に至るまで気が付いていなかったが、この本は「書を捨てよ、町へ出よう」で、芝居や映画は「書を捨てよ町へ出よう」だったり、「書を捨てよ!町へ出よう!」と表記されていることもある。とすると厳密には同名では無かったのか!

それはともかく、この本は戯曲でも小説でも詩でもなく、寺山らしく多方面に向いた様々な評論、エセーを集めたものだ。その筆は、競馬はもちろん、家出、ジャズ、歌謡曲、さらにはジャイアント馬場にも及ぶ。

その初版本の復刻版が、今日、発売された。後に角川で文庫化された際に外された作品や横尾忠則のイラストも完全に復刻しているとのことだ。

文庫版は長く持っているが、章立てからして異なっており、横尾忠則が手掛けたブックデザインは奇抜で、紙質や厚みや刷り色も含めてひとつのマスプロダクトでありつつアートでもある本になっており、これは文庫ではコスト的にも再現できないものであって、全くの別物である。

老眼が進んだのと、これからひたすら老いていく身で物体としての本が家の中に増えるのも悩ましく、昨今は電子書籍の方がありがたいと感じるが、これは実体のある本でなければ価値がない。

書店により付録が異なっているようで、1967年の『毛皮のマリー』『大山デブコの犯罪』の復刻チケットに加えて、私が購入したジュンク堂では、舞台の方の「書を捨てよ!町へ出よう!」のポスターの絵葉書が付いていた。

今年は没後40周年のメモリアルイヤー。5月に三沢と恐山を訪ね(まだ感染症が怖くて人の多そうな命日はあえて避けたが)、秋にはブルーレイディスクになった「田園に死す」を購入し、暮れが近づいてこの本を入手した。

家では時々寺山修司の物まね―もとは40年ほど前に寺山修司の真似をするタモリを見て始めたものだったのだろうが―をして、唯一理解してくれる家内に聴かせることもある。存命時の寺山に対しては覗きで捕まったりする奇妙な人、という認識だったが、年を経て彼の残した著作がどうにも愛おしいものになっている。

またいつか記念館を訪れたいものだ。

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