DALIのSPEKTOR1とDENONのRCD-M41。その1。

中学高校を通じての友人に影響されて無い金をちまちま貯めてオーディオを楽しんでいたのは、もう40年以上前のことになる。

アンプはオンキョーのA819、レコードプレーヤーは型番を覚えていないが、トリオのものを中古で買って、スピーカーはというと、長岡鉄男先生の本を買って自分でエンクロージャーを設計し、合板を買ってきて鋸で切って組み立てて、コーラルの通称ロクハン、すなわち6インチ半、つまり16センチ口径のフルレンジユニット(多分FLAT-6II)1発を組み込んだバスレフだった。カセットデッキのYAMAHAのK-1aは、試験の成績を賭けて親に買ってもらったっけ。

フォノカートリッジは、頑張って金を工面してオーディオテクニカのAT34EIIを買ったが、普段使いにはもったいなく感じて、SHUREの廉価モデル、M95HEを使うことの方が多かった気がする。

友人のシステムは、アンプはA級を売り物にしていたビクターで、レコードプレーヤーの記憶はないがカートリッジはSHUREのV15TypeIIIHE、スピーカーは彼の家にもともとあったものだったか。ナカミチのカセットデッキに、よくBASFのテープを使っていたのを覚えている。このシステムでスパイロ・ジャイラや、ときにタモリのレコードなど、そして当時話題になっていたテラークレーベルのチャイコフスキーの「1812年」―大砲の音のパート、ふつうは打楽器で済ませるところを、デジタル録音の技術を知らしめるために本物の大砲を使って収録したもの―などを聴かせてくれて、パワフルでエッジのきいた音が印象的だった。

私のシステムはというと、もうちょっと地味な音で、DENONのPCM録音のラインナップにあった、スメタナ弦楽四重奏団の「アメリカ」なんかは非常に良い感じで聴けた覚えがあるし、ビートルズやその周辺のバンドのサウンドなどには十分なものだった。

その後、進学で田舎を出て、カセットデッキをオートリバースのものにしたり、ターンテーブルが壊れて入れ替えたり、オートチェンジャー付きのCDプレーヤーを導入したり―こうして振り返ると集中して聴くというより利便性を重視する傾向が明らかだ―しつつ、いつしかアナログレコードはすべて処分し、ハードも結婚してからはリビングに置ける程度のミニコンポに替えたりしてきた。

そして、10年ほど前に、SACD対応のSONYのBDプレーヤーと、FX-AUDIO-のデジタルアンプと、とりあえずAmazonのマーケットプレイスで大阪日本橋のシマムセンが出品していたDENONのSC-M33というスピーカーを買って。

この組み合わせで音楽を聴くようになったのだが、通勤の行き帰りにスマートフォンに入れたMP4を聴くことの方が圧倒的に多くなり、さらに単身赴任で東京転勤、3年半ほど経って家族を呼び寄せたが社宅が狭かったので家財は元の家に残し、いよいよ音楽はPC+ヘッドフォンかスマートフォンで聴くのみとなっていた。

転勤が終わって家に戻って、あらためてリビングで音楽を聴いたり、AmazonプライムやNetflixをちっとは良い音で視聴したりしたいな、と考えて、さてどういうシステムにするか、検討を始めた。もともと2chステレオを愛好していて、スピーカー2本で音場が再現される楽しみを知っているからか、あるいは単に面倒くさそうに感じるからか、サラウンドには興味がわかない。あくまで、ステレオを楽しみたい。

・まずはサランネットが傷んできてみすぼらしくなったスピーカーを替えたいが…全然そんなことないでしょと、家内に却下された。

・CDプレーヤー代わりだったBDプレーヤーは東京に持っていき、その後人にあげてもはやない。BDレコーダーでCDは聴ける(SACD非対応だが)から、HDMIでTVに、TVから光ケーブルでアンプに入れて聴くことは可能。

・しかし、今のデジタルアンプはリモコン非対応。これは地味に不便だ。これには家内も難色を示している。

・ブルーレイレコーダーでCDを聴くのもいかがなものかという気がする。TVもONにする必要があるし。

となると、選択肢としては、

1)アンプをリモコン対応にする。

2)CDプレーヤー(かSONYのSACD対応BDプレーヤーか)を導入する。

というところ。リビングのTV台に収まるコンパクトさも重要で、そうなると1)はFX-AUDIO-のデジタルアンプでリモコン付きのものが候補に挙がるが、2)がなかなかよさそうなものがない。アンプ、プレーヤーともTEACにコンパクトなシリーズがあり、揃えれば理想的かも、だが、結構な金額になる。金額を抑えようと思えばケンブリッジオーディオあたりに安価な単品コンポーネントがあるが、そっちは昔ながらの単品コンポーネントのサイズで、でかすぎる。

(それに、本格的にやるならCECのベルトドライブのCDトランスポートとそこそこのプリメインアンプとデザイン重視でレトロなJBL4312あたりで組んでみたいが、それらを置いて鳴らすような住環境ではない)

で、思いついたのがCDレシーバーである。昔はレシーバーと言えばプリメインアンプにFMチューナー機能が付いたものだったが、CDの時代になってCDプレーヤー機能まで取り込むようになった。これなら1台買えば1と2を兼ねることができる。しかもコスト的にも無理が無さそうだ。

しかし、選択肢は多くない。スピーカーを含めてマイクロコンポとして売られているものでなく単体で売られているものだと、現行ではDENONのRCD-M41とRCDN10、マランツのM-CR612ぐらいしかないのである。

RCD-M41:実売3万円前後、30Wアナログアンプ、2017年発売

RCD-N10:実売5万円前後、60Wデジタルアンプ、2018年発売

M-CR612:実売6万円前後、50Wアナログアンプ、2019年発売

高さはいずれも100㎜ちょっと、奥行きも300㎜ちょっと。幅はM41が210㎜で、残り2機種は280㎜と少しでかい。612のみ無線LAN対応だが、612とN10という後発がいずれもBluetooth3.0対応で、古いM41が4.0対応というのは何故だろう? M41に無いHEOS対応との兼ね合いか。しかし、両機種ともHEOSの使い勝手についてはいま一つと言うレビューが並ぶ。

幅とBluetoothのバージョンが気になるのと、HEOSには期待しないということでM41に決まり。趣味性の高いものにおいて価格が安いというのは不思議なことに不安材料になりうるが、レビューを漁ると世評もなかなか良く、そうなると安さも魅力に転じる。

早速視聴もせずに購入したのだが、TV台の棚の奥行が足らず、スピーカーケーブルをバナナプラグ接続にするとM41が収まらない。ケーブル直結に変えて、電源ケーブルの根元部分が台の奥に当たるのをだましだまし押し込んでセッティング。そして、周りに置くものの都合で、床にスピーカースタンドを置いて設置する案は家内に却下されたため、TV台の上、TVの両脇に低めのスタンドを置いてM33をセットして繋いだ。

スタンドはサウンドハウスのMST2。TV台が転勤先の狭い社宅に合わせて買った、2つのパーツに分かれていて組み合わせ方で幅や形状を変えられることが売りのもので、そのため左右で30㎜ほど天板の高さに差が出てしまう。それを高さ調節ができるこのスタンドで吸収し、スピーカーユニットの位置を揃えている。

インシュレーターは、AETのVFE-2005H。滑り止めとしても効果があるようで、載せたスピーカーは簡単には動かない。

すると、だ。けして大きくはないはずのM33がでかく見えて仕方がない。M33を買い替える必要はないと言っていた家内も、インテリアとしての観点からだろうが、もっと小さいスピーカーにしないと、と言う。

音は良いのだ。なかなか良い。RCD-M41が良いのだろう。M33も7年ほど使わずに放置していたのだが以前より良く鳴っているような気がする。スーパーツイーターを付けてカタログスペックを稼いだだけではないか、という誹りを受けがちだった機種だが、そんなことはない。厚みのある材で見かけ以上に重く、安定感があり、小型ブックシェルフとしてはわずかだが大きめの14㎝ウーハーが力感、豊かさに貢献している。久しぶりにまともに聴いているからよく聴こえているだけという可能性ももちろん大である。しかし、良い。フルオーケストラはさすがに箱庭的な小ぢんまりした鳴り方になってしまうが、独奏曲なんか素晴らしい。グレン・グールドの後年の「ゴルドベルグ変奏曲」、CDを鳴らして目が覚めるような瞬間がある。

しかし、どうにもうちのリビングでは圧迫感があるのだ。

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