第4回入船亭一門会~新扇橋を迎えて~。

今日は池袋演芸場で入船亭一門会を聴いてきた。皆さん九代目扇橋師の思い出などまくらで語りながらの会で、良い会だった。ちょっと客入りが寂しかったのは勿体ない…。

柳家しろ八さんが開口一番。続いてまず扇治師が「師匠に教わったネタを…」とのことで、「まんじゅうこわい」。このネタは九代目のCD以外ではちゃんと聴いたことがないのだが、その音源を彷彿させるものだった。まさに、伝承であった。

扇里師も「師匠に教わったネタを…」とのこと。五戒の話が出たので「茄子娘」だろうと思ったらその通り。これも九代目のCDで聴きこんだネタだが、一門の芸に忠実な印象で、十代目が誕生して「扇橋」がこの会に参加するのは初めてとのことだから、今日はことさらそういう日だと、皆さん意識されているのかなと思った。

そして、浅草で扇遊師の「狸賽」を聞いた時にも感じたが、九代目は何しろ声が独特で、こういうモノノケ的なものが出てくる話だとことさら口伝の民話を聞いているようで何とも言えない味がある。上手下手以前にあの声音は稀有なものだったのではないかと感じた。

直前に出番の入れ替えがあり、トリの予定だった扇遊師が仲入り前に、仲入り後に扇好師、トリを十代目。

扇遊師は「明烏」。これは、九代目の音源は出ていないと思う。扇遊師のCDで聴いているネタ。酒飲みもそうだが、遊び人を演じる扇遊師も生き生きとして見える。扇遊師演ずるおかみさんも好きだけど。

扇好師は昨年の「兄弟盃の会」では「麻のれん」という、不勉強な私は初めて聞くネタだったが、今日も聞いたことのないネタだった。「唖しの釣り」。二度続けてなかなか貴重な機会だった。

そして、どなたかおひとりは甚五郎ネタをかけられるのではないかと思っていたら、トリの十代目が「ねずみ」だった。九代目と扇遊師のCDは両方聞きこんで、あまり違いはないのだが、十代目はところどころに擽りを入れてあった。そのあたりは扇辰師から受け継いでいるのかもしれない。

古典落語はクラシック音楽に似ていると常々思っているのだが(おそらくそんなことを言っている人はいっぱいいるだろう)、交響曲が指揮者によって様相を変えるように、ネタも演者によって変化する。クラシック音楽よりも自由度が高い分、受け継がれつつ変化もし、ネタと、そして芸が生き続ける。

さて、九代目扇橋師のCDから入って、扇遊師のCDを聴くようになり、2016年に東京に転勤になって扇遊師の会を聞きに行くようになったわけだが、いよいよ夏には約7年の東京転勤生活を終えて大阪に帰るので、滅多なことでは聞きに来れなくなる。いつどんなネタを聞いたか、整理しておこう。

 2016年11月27日

 映画「寝ぼけ」公開記念、入船亭扇遊独演会

 扇遊師「片棒」柳家三語楼師「くしゃみ講釈」扇遊師「試し酒」

2018年7月22日

 なかの芸能小劇場「夏の落語長屋 扇遊夏の独演会」

 開口一番 桃月庵ひしもち「子ほめ」

 扇遊師「ねずみ」「試し酒」

2018年12月8日

 文京シビックホール 入船亭扇遊、三遊亭兼好二人会

 開口一番 三遊亭じゃんけん「三人旅」

 扇遊師「夢の酒」兼好師「寝床」兼好師「元犬」扇遊師「妾馬」

2021年12月6日

 熱海の夜 第十夜

 開口一番 遊京「粗忽の使者」

 扇遊師「一目上り」「お見立て」「芝浜」

2022年3月19日

 弥生の独り看板 入船亭扇遊「茶の湯」 

 開口一番 扇ぽう「元犬」

 扇遊師「浮世床―本・夢―」「井戸の茶碗」「茶の湯」

2022年7月8日

 入船亭 扇遊・扇好・扇辰 兄弟盃の会

 開口一番 小辰(十代目扇橋)「鮑のし」

 扇辰師「田能久」扇好師「麻のれん」扇遊師「藁人形」

2023年5月2日

 浅草演芸ホール夜席

 開口一番 辰じろ「???」

 扇遊師「狸賽」(主任:三遊亭白鳥師「ギンギラボーイ」)

2023年5月21日

 池袋演芸場 第四回入船亭一門会

 開口一番 柳家しろ八「たらちね」

 扇治師「まんじゅうこわい」扇里師「茄子娘」扇遊師「明烏」

 扇好師「唖しの釣り」扇橋師「ねずみ」

2016年の夏に東京に来て、2017年から翌年前半までは仕事が忙しかったのか全くである。そして2019年の暮れからはコロナ禍だ。平日の会には行きづらく、コロナ禍もあって、せっかく首都圏に住んでいたのにあまり聞けていない。

これからだが、扇治師の5月と6月の会のチラシをいただいたがどちらも都合が悪い。扇好師は6月末廣亭の上席昼の部、扇遊師は鈴本の中席昼の部の主任なので、大阪に帰る前に、せめてどちらかは聞きに行きたいところ。

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