路地裏の少年。

中学の後半から高校にかけて、浜田省吾をよく聴いていた。カップヌードルのCMタイアップ曲であった「風を感じて」で世間に名が売れたあたりから、ロックに傾いていく時期だったろうか。しかし、自分にとっては、遡って聴いた彼のデビューアルバムの1曲目、ソロデビューシングルである「路地裏の少年」こそが最高傑作だった。
アルバムを(カセットテープで)買ったのが、たぶん1979年。38年前だと思うと、驚くしかないのだが、今日、通勤の帰りのメトロの中で、Youtubeで聴いていたら、知らず知らず涙が滲んできて困った。
幼いころの記憶を辿ろうとすると、大抵すぐに浮かぶのは転居を繰り返したそれぞれの先の路地裏の光景で、なぜかどの路地裏にも誰もいない。路地裏という言葉そのものに心をやられる要素があるような気がしてならないが、そんなことで涙が出たのではあるまい。
長じて私は浜田省吾をあまり聴かなくなるのだが、恐らくその理由は、彼の詞の生々しさであり、青臭さであり、自分が矯め殺したり捨ててしまったものを捨てずに走り続けている彼の神々しさだろう。なんだろう。痛いところを突かれるというか、見られたくないページを無理やりめくられるというか。
そうして今夜私は15のころの自分が持っていた根拠のない自信やあてのない夢や愚かで青臭くしかしきらきらとしていたものたちを思い出し泣いたのだろう。

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