完全に個人的なチェン・カンタイブームで「燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘」を観る。

身辺に変動あり、また、それとは関係ないが、有料TV視聴のサービスとハードウェアが変更されて録りためていた映画が観られなくなり、いまはYoutubeか、少しずつDVDやBDを購入して映画を観ている。
パッケージソフトでは、マカロニウェスタンからイーストウッド作品に広げて行っているのだが、Youtubeの方では往年のカンフー映画を英語吹き替えか広東語に英語字幕かで観ていて、中でもショウブラザーズのチェン・カンタイ(陳觀泰)主演作品に惹かれている。

チェン・カンタイは武術大会で優勝して映画界にスカウトされたそうで、もともとカンフーの下地があるわけだから、アクションシーンの動きは申し分ない。スリムだが引き締まった体つきで、南拳、洪家拳とかそのあたりだろうか、手の先まで確りと気が通った殺陣を見せてくれる。南方系なのか、目が大きく、いわゆる目力も強い。
日本で当時から割と知られていた主演作は、1972年の「嵐を呼ぶドラゴン」だろうか。福建少林寺系の伝説に登場する洪熙官役を演じているが、デビュー作の「上海ドラゴン英雄拳(原題:馬永貞)」や、その続編と言うか二番煎じなのだが「復讐ドラゴン必殺拳(原題:仇連環)」なんかも素晴らしい。こういった作品が、ブルース・リーブームの後になって玉石混交で輸入され、乱費されてしまったために、日本では真っ当に評価されていないのではなかろうかと思うと少し残念だ。

それはともかく、カンタイは近年でも俳優としての活動を続けていて、RZAの「アイアン・フィスト」にもチョイ役で出ていたし、そういえばドニー・イェンとニコラス・ツェーの「かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート」にも出ていたが、主役級でカンフーまで確り見せてくれているのが、2010年の「燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘で、どうにも観たくて仕方がなくなり、パッケージソフトになって結構経つのだけれど、いまさらながら取り寄せた。


狂言回し役の若者がいて、地上げの手伝いをしに行かされた村で、ブルース・リャンとカンタイが演じる年老いた武術家二人と出会う。彼らはかつて武館だった建物の一階で茶館を営みながら、二階で30年間昏睡している師父の面倒を見ているのだ。リャンは昔足を折って今も引きずり、同じときにカンタイの方は右腕を折っていて、その上年もとっているからけして強いとはいえない有様だが、それでもそんじょそこらの使い手よりは強い、と言う微妙な感じ。
茶館は地上げのターゲットで、若者は内側から取り入るよう指示をされるのだが、ふとしたきっかけで師匠が目覚め、若者のことを30年前のリャンとカンタイだと思い込んで弟子として扱い始め、武術大会への参加を目指してしごかれる。大会の主催者側に地上げ屋が絡んでいたりして、そこのところの関係が今ひとつ説明が足りない感じだが、怪我に泣き半ば錆付いていた老人二人も蘇った師匠の下で修行に勤しんでいく。

リャンとカンタイ、地上げ屋側に味方する村の役人に「五毒」のロー・マン、大会を主催する武術家ポンに「怒れ!タイガー」のチャーリー・チャン、1シーンだけ出てくる警官に顧冠忠と、往年のカンフースターが見られるだけでも楽しいのだが、「ドラゴン怒りの鉄拳」風の主題曲―それも、コーラス版と男性ボーカル版の両方をそれっぽく作って劇中で使い分けると言う徹底ぶり―に感じ入り、ついにはクライマックスで思わず涙がにじんでしまった。
もっともこの涙はカンフー映画が好きで子供の頃から心ときめかせていたおっさんにしか分からないだろうが。

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