トルルス・モルクのバッハ、無伴奏チェロ組曲。

バッハの無伴奏チェロ組曲については、過去に何度かメモしてきたが、最初に慣れ親しんだポール・トルトゥリエの一回目の録音が、自分にとってのスタンダードになっている。あれこれ手を出しても、結局そこへ戻ってしまうし、イヤホンを買うときに店頭で試聴する際なども、必ず聴いてしまう。
とは言え、他の曲でこれはよいなという演奏があったりすると、その人のバッハを聴いてみたくなったりはするもので、ショスタコーヴィチの協奏曲が非常に良かったトルルス・モルクについては、ぜひ聴いてみたいと思っていた。
店頭などで見かけず、忘れていたのだが、ふと思い出してAmazonで検索してみると、マーケットプレイスで驚くほどの値段で出ていたので、注文し、ドイツから10日あまりで届いた。EMIレーベルはワーナーに買われてERATOに変わってしまったが、EMIの兄弟ブランドであったVirginはどうなったのか。今回届いたディスクはVirginのロゴのままだ。



スマートフォンは機種交換したばかり、イヤホンも購入してそれほど経っていないので、過去の記憶と比較するのも難しい面はあるのだが、何より素晴らしいのはSN比の良さと言うか、ノイズを感じさせないクリアな音だ。現在のイヤホン、ゼロオーディオのカルボ・シンゴロを選んだ決め手のひとつが独奏楽器での結像の明確さだったわけだが、その威力が十二分に発揮され、生き生きとした音楽が目の前に現れる。
演奏はと言うと、ショスタコーヴィチで感じた軽やかさは少し鳴りを潜めるが、それでもなおきびきびとした、若干速めの流れは、トルトゥリエに慣れた耳にはやや違和感をもたらす。しかし、聴き進めると、アクセントの付け方、ふとタメを作るところなど、力んだり重々しくなったりはしていないが、端々に気合のようなものが迫ってきて、真摯に、大事に弾いている印象が深まって行く。それは、よく捉えられた奏者自身の息づかいからも窺える。大家然とはしていない、現代的な演奏ではあろうが、奇を衒ったり野心を剥き出しにしたりせず、正直に曲に向き合っているような。

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