チャンネル銀河で「隋唐演義」。

10月から、チャンネル銀河で中国本土のドラマ「隋唐演義」が放映されている。平日昼間に2話ずつ放映で、全62回のうち、すでに半ばを過ぎた。
原作は清代初期に書かれた小説で、隋が成立し最後のライバルであった陳を滅ぼしたところから、唐に変わり、安史の乱の後までを描いたものだそうだが、このドラマは唐の成立までをまとめたものらしい。



主人公は、隋の武官から、紆余曲折を経て唐の建国の功臣となった秦叔宝。同じく唐の建国時に活躍した尉遅敬徳とともに、後の世に厄除けの「門神」として祀られている人物だ。
「門神」と言えば、水滸伝で花栄がまだ清風塞にいた頃、自邸の門に描かれた門神を弓で射る場面が思い出される。

百回本の第三十三回、劉高に命じられて宋江を取り押さえに来た者たちに対し、まずは左側の門神の絵の棍棒の先を、次いで、右側の門神の絵の兜の赤い緒を射抜いて見せ、追い払うのだ。
こういう件を読むと、左右どちらが秦叔宝で、どちらが尉遅敬徳か気になるのは悪い癖だろうか。秦叔宝の獲物は簡と言う名の武器で、断面が四角形や六角形になった鉄の棒。これを両手に一本ずつ持つ。水滸伝では、敵側の武将で誰か使い手がいたが、左右二刀流ではなかったと思う。
尉遅敬徳の武器は鞭で、これは彼の名を渾名に持つ病尉遅孫立、小尉遅孫新兄弟、さらには呼延灼でお馴染みだ。鞭と言ってもこれも鉄(や銅)の棒で、攻撃力と強度を増すためか、竹の節のようなものが連なっている。尉遅敬徳も左右二本を使う。双鞭呼延灼のイメージそのままだ。
しかし、門神の画像を検索してみると、描かれている彼らは必ずしも簡や鞭を持っているとは限らず、 大刀や槍を構えている意匠も多い。右手に簡、左手に槍と言うパターンもあったりして、随分と適当、大らかなものだ。吉川・清水訳の百回本で「棍棒」とあるのは果たして簡か、鞭か、あるいはそのほかの武器か。まあ、そんなに拘るところではないのだけれど。

それはさておき、水滸伝読者としては、病尉遅孫立、小尉遅孫新兄弟の渾名になっている尉遅敬徳の方が何となくなじみがあるし、また、正史でも、尉遅敬徳の方が重要な人物として詳しく記されているようだ。唐に帰順したのは秦叔宝の方が1年早い(619年)ものの、唐の太宗李世民が描かせた「凌煙閣二十四功臣」の序列では、尉遅敬徳が7番目、秦叔宝は24番目となっているそうで、二十四功臣には武人以外も多く入っており武功の順番では無いわけで武力についてはわからないが、尉遅敬徳の方が貢献度は高かったのだろう。
だが、だからこそ、秦叔宝の方に想像力を働かせる余地がより多くあったとも考えられるわけで、史実とは異なる来歴で描かれている 。

水滸伝や武侠小説以上に行き当たりばったりのご都合主義で、おかしなところは多々あるが、久々に大型の中国歴史ドラマが楽しめるのはありがたい、と思うことにしよう。
主人公を演じるのはニイ・クァンで、水滸伝では燕青を演じていた人だ。ちょっと肉がついて貫禄が出てきたか、いい感じだと思う。その義兄弟で全土の義賊を取りまとめる頭領である単雄信に、水滸伝の林冲、鹿蹄記のトルン役などでお馴染みのフー・ドン、そのほか、どこかで見たような役者が揃っている。
気になるのは、女優さんの声がみんな幼いというか、アニメ声というか。そういう嗜好があるとしか思えない。昔の香港映画では声はすべて声優さんが当てていたそうだが、今の中国のドラマもそうなのだろうか。

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