フルニエのショスタコーヴィチと入船亭扇遊さんの「厩火事」。

ピエール・フルニエのショスタコーヴィチのチェロソナタが再発されるのを予約していたのが届いた。




そのついでに、入船亭扇遊さんの朝日名人会シリーズの2枚目も注文していたので、これで今のところリリースされているシリーズ3枚が揃った。



繰り返し聴いているのだが、なんと言っても3枚目の「片棒」の次男の、馬鹿が度を越して狂気すら迸るおかしさには、こちらまで笑い狂ってしまいそうになる。1枚目の「寝床」での、主人が逃げた番頭を追いかけて、番頭が閉じ篭った蔵の窓から義太夫を唸り込む場面の小気味よいテンポ、スピーディな語り口から立ち上るそこはかとない狂気も味わい深いものだ。
今回届いた2枚目は、「厩火事」と「たちきり」を収録している。
「たちきり」は非常に完成度の高い口演ではあるまいか、とは思いつつも、ネタそのものに解釈の余地がある気がして、そちらに気をとられてしまう。一方つくりの明快な「厩火事」はすっきりと楽しめる。いい加減な亭主に愛想をつかして仲人のところへ離縁の相談に来た髪結い。とは言え結局は亭主に惚れている弱みで踏ん切りがつかない。背中を押してもらいに来たはずなのだが、仲人が亭主の悪いところを取り上げて離縁やむなしと語れば、あの人はそんなに悪い人じゃないと庇い立てる始末で堂々巡り。この一連のやり取りが秀逸で、揺れる女房のいじらしい心持や物を知らないあまりの強烈な呆けぶりを弾けさせつつ、片や仲人は、滔々と故事など持ち出しながらまさにこれこそ立て板に水と言う語り口。この対比には目を瞠る。

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