マゼールとフィルハーモニア管の最後のマーラー、7番、8番、9番。

ミヒャエル・ギーレンのマーラー全集が、最後までいまひとつぴんと来ないまま終わってしまい、相変わらず落語を聴いたりしながらではあるが、ロリン・マゼール指揮フィルハーモニア管弦楽団による2011年のマーラー・チクルス、最後にCD化された7番から9番までのセットを聴き終えた。
CDが出揃うまでずいぶん長かったので、最初に出た1~3番、1年前にでた4~6番の印象はもうほとんど残っていないが、どれも丁寧でゆったりとしていて、マゼールらしいアクの強さはあまり感じられないものだった。



7番でもやはり同様の傾向で、演奏のみならず、ライブゆえに録音をする側も余裕を持たせていると言うか、ぎりぎりまで追い込んだ音作りで臨んでいるわけではなかろうし、穏当という感じではある。だが、この、入り込み過ぎない感じは、わけの分からないこの曲のアウトラインをそこそこ明確に見せてくれるようで、なかなか悪くない。

そして8番、これは素晴らしく面白いものだった。少なくともここではこの曲は、歌入りの交響曲ではなく、長大な歌曲だ。オケは終始伴奏に徹しているかのようで、独唱、合唱、入れ替わり立ち代りの歌声に光が当てられているように感じる。特に児童の合唱は、晴れの舞台に真剣に、しかし明るく臨む彼らの楽しげな表情まで脳裏に浮かんでくるようだ。長大さが苦にならず―と言っても長いものは長いのだが―歌を楽しむ8番。これは、あり、だ。

最後の9番は、90分を越える演奏で、なんとも遅く、長い。速い演奏と比べれば10分以上の差があるわけで、ノイマンとゲヴァントハウス管との録音なんかだと15分ぐらい、短い楽章ひとつ分の差と考えると、これはえらいことだ。同じ楽譜を演奏してどうしてこうなるのか、妙ではあるが、これもクラシック音楽の面白いところだろう。
特に第一楽章は、少しはらはらするほど遅い。音楽として成立するぎりぎりなのではなかろうか。オケにとっては速過ぎるのも大変だろうが、こんなに遅いのも息が続かなかったり集中が切れたりしないのかと心配になる。アンタル・ドラティとベルリン・ドイツ響とのライブが明らかに遅いと感じる個性的な演奏だったが、あれでも調べてみると28分台で、この演奏は32分台、全曲でもドラティの85分台に対して92分台と、とてつもなく遅いことが分かる。感想としても、遅い、としか言いようが無い。
第二楽章に移って、やはり遅いのだがそれほどでもなくなり、第三楽章もやはり遅いが、ここではそれなりに重みのようなものが滲み出ていて、悪い気はしない。
そしていつものように、終楽章に至ると、心地よくなってしまってなんだか分からないうちに満たされて、気が付けば曲が終わっているので、引っかかるようなところ、気になるところは無かったのだろう。ただ、やはり序盤の遅さはなんとも奇妙で、評価の難しい演奏ではあった。

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