入船亭扇遊さんのCD、DVD。

亡くなった入船亭扇橋さんのCDを聴いて、物腰の柔らかい語り口や、江戸の市井の人、長屋の住人を演じてもけして下品に落ちないあたり、非常に好ましいものだった。特に、左甚五郎ものの「三井の大黒」「ねずみ」は素晴らしい。
そんな扇橋さんのお弟子さん、入船亭一門にはどのような噺家さんがいるのかと、Youtubeで探してみると、惣領弟子の入船亭扇遊さん、その口調がまたよい感じだった。
声は師匠よりも高く陽性で、よどみなく流れるような語り口にも師匠とは異なるスピード感があるが、端正で品があるところはこれが一門に共通する特長であろうかと思わされる。

―あくまで、大名人ではあろうが志ん生さんの声が苦手で、西でも松鶴さんはちょっと聴きづらく(病気になる前の滑舌がよかった頃の録音を聴いてもだめだった)、 枝雀さんもアクが強すぎると感じるような人間の感じ方である。―

そこで、扇遊さんの録音が手に入らないかと探してみて、残念なことにあまり数が無いのだが、いくつか取り寄せてみた。



CDは現行では朝日名人会のシリーズが3枚。うちVol.1とVol.3の2枚を聴いた。2000年代後半からの録音で、Vol.1は「寝床」と「巌流島」、Vol.3は「片棒」と「妾馬」。Vol.2は別のものを予約したついでに頼んだのでしばらく届かない。
DVDはビクターが「本格 本寸法」と銘打ってリリースしているシリーズで、ビクターが実際に落語会を開催していたプロジェクトのパッケージだ。演目は「野ざらし」と「文違い」で、2007年の7月、8月の収録。
これらの中では「寝床」と「片棒」が特に素晴らしい。どちらも分類すると「お店噺」になるのだろうか。主人から問いかけられて、「寝床」では使用人が、「片棒」では跡継ぎ候補の息子たちが、ああだこうだと答える様のおかしさが、歯切れよくテンポよく、とても気持ちよく笑える。
特に寝床は師匠である扇橋さんの録音と聴き比べたりしているものだから、家内に「また義太夫のハナシ聴いてるのね!」と呆れられてしまった。さては変種の義太熱にでも罹ったか。

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