佐野研二郎さんの件、続き。

何だかすごいことになっているので、もやもやするから、独白をメモしておきたい。 件のパクリ疑惑のうち、トートバッグについて、仮に部下のデザイナーがこういう案を持ってきたらどうするか、あるいはその後何をさせるか。ちょっと考えてしまうのだ。
基本的に、デザイナーがラフスケッチを持ってきたとして、そこにあるビジュアルイメージは、デザイナー自身がいちから作った(これは行為として「作った」と言っているのであって、イメージの源泉がデザイナー内部にあるという意味ではない)ものか、見本(ダミー)としてWebや雑誌から拝借したものか、そのどちらかである。 それを見て、案を絞り込み、クライアントに提案し、採用された案については具現化を進める。

イラストが使われていれば、見本のイラストのタッチ、作風がそのデザインには必要なわけだから、普通はそのイラストレーターに発注する。予算的に無理な場合など、近い感じで安くお願いできる別のイラストレーターに発注することはあるが、そういう場合はなおのことパクリにならないよう、注意を払う(佐野さんの場合、ご自身が描くイラストも“売り”であろうから、「佐野健次郎デザインのトートバッグ」と言う案件で、外部のイラストレーターに発注すると言う選択肢は無いのだろうが)。

写真が使われていれば、構図やモチーフなどは当然見本を下敷きにするわけで、そこを全てパクリと言われると厳しいが、撮影を行う。
見本を撮影したカメラマンの作風が必要であればその人に頼むし、シチュエーションや場所の雰囲気が選定基準であれば、カメラマンは腕と予算で選ぶ。

写真にせよイラストにせよ、作りたいイメージにドンズバで合致するものがストックフォト/レンタルイメージであったならば、それを使うことも当然あり得る。しかし、よそで使われる、すでに使われている恐れを考えると、この件のようにノベルティとしてデザインそれ自体が価値の中心に位置する場合、オリジナルに固執したいのがデザイナーだと思うし、クライアント企業も、ノベルティに魅力を感じる生活者側もそれを当然と、疑わないだろう。
何より著名なアートディレクターが率いるクリエイティブ・ブティックではどうなのかは分からないが、ナショナルブランドのクライアントの、この規模の仕事であれば、デザイナーは―レンタルイメージで済まさざるを得ないような予算の無い仕事と異なり―いちから作れる!と言う喜びを持って事に当たってくれるはずだ。

掲載に問題あればお知らせください。

小鳥と麦の案(メモパッドの鳥の意匠を無断で加工し使用、フリー素材の麦の写真を加工し使用するもクレジット表記の規定に違反)
デザイナー自身が作るか、イラストレーターに発注するか検討。元になる鳥と麦の写真をストックフォトから買ってデザイナーが加工、と言う段取りになる可能性も結構高い。

タイポグラフィの案
これ、アバクロのパクリに見えるよね?やばくない?

猫の案
デザイナー自身が描いたのか、誰かの絵をラフスケッチ用にダミーで入れているのか確認。普通ならその誰かに発注する。

タングラムの案
これは特に何も。いや、誰かの作品で似たのがないか注意を促すかも(デザインではなく美術作品の分野で)。

「BEACH」の案(セカンドライフ内で販売されている意匠を色調補正して使用。違法かどうかは不明)
書き起こすか物を作って撮影するか実際に海外の実物を撮影するか、そういう検討を進める。

スイカの案
元ネタとされるものを見ていなかったのでアイデアそのものには特に何も言わないが、種の位置はおかしいと指摘する。

フランスパンの案(個人が撮影しブログで使用していた画像を無断で加工し使用)
撮影の段取りをする。

浮かぶ人のイラストの案
描いたものであればOKを出しつつ、どこかで見たことあるようなタッチだが大丈夫かとは確認する。パクリ元とされる絵がラフスケッチに用いられていたら、パクリ元の作者への依頼を検討する。

サングラスの案(2題、Web上の画像を無断使用とされる)
撮影の段取りをする。

ヒトデの案
撮影の段取りをするか検討するが、難しそうなのでレンタルイメージを元に加工するかもしれない。

洋書の案
表紙が逆になってるで、と指摘する。アホボケカスとは言わないまでも、こんなものが世の中に出たら恥ずかしくて外を歩けないぞ、ぐらいは言うかもしれない。

英文(ニーチェ)の案(書体のほう)
ニーチェやのに英語でええのか?と難癖をつける。

英文(ニーチェ)の案(手書き文字のほう)
名前のスペル間違うてどないやねん、と叱る。「参考にした画像が間違ってたんです」と言い訳され、もう一個の案(書体の案)のほうはスペル間違うてないやないか、そっち作るときに気ぃつかなあかんやろ、何考えとんねんあほちゃうか、とさらに切れる。

クロワッサンの案
撮影の段取りをする。

と、思うままに書き連ねてみると、どうもアシスタントが上げてきたラフが、そのまま進んでしまったのではないかと思えてきた。もちろん、そうだとしても大問題なんだけど。

コメント

人気の投稿