東京五輪エンブレムとか佐野研二郎さんの問題について。

グラフィックデザイナーがいる職場で働いているので、今回の東京五輪エンブレムのパクリ疑惑問題については、身近で話題になることもあり、注視せざるを得ない。
争点は色々あると思うが、日本国内で商標登録に関わった経験―国際商標の場合異なる部分があるのかもしれないが―から整理してみると、このようなところか。

・まず商標登録は、例えばごく平たく言えば「食品」とか「かばん」とか、適用する範囲を決めて出願するのであって、その範囲内(実際には例よりももっと広い範囲だが)で類似したものが無ければ、商標登録は認められる。ベルギーの劇場のロゴが商標登録されていたとしても、適用する範囲が異なっていれば類似とは見做されないし、商標登録されていなければそもそも類似しようが無い。
・したがって、商標登録をしているから問題ない、と主張することは可能ではあるし、商標権の観点からは、確かにあのエンブレムを使うことに問題は無いはずだ。
・しかし、プロセスやコンセプトがどう異なっていようとアウトプットが似てしまっている以上、イメージの悪化など何らかの影響は避けられない。
・同時に、当然のことだが、商標登録できていることが、パクリでは無いという証拠にはならない。

よって、ネット上で粗捜しが止まないのも仕方が無い。しかも厄介なのは、ベルギー側のデザイナーが、商標権ではなく著作権で争おうとしていることだろう。
著作権と言うのはものをつくった時点で自動的に発生するもので、商標権のように公的機関が類似などチェックした上で認めてくれるものではないから、争点が曖昧になるはずだ。見た、見ない、の水掛け論になってしまう。裏でカネが動いて終わりそうな気もするが…。

J.R.R.トールキン大先生
パクリかどうかという点に関しては、パクリではないが無意識の引用とでも言うことはあったのではないかと思う。個人的には、あの劇場のロゴかどうかは別にして、イメージの源泉になった何かはあったろうし、そういうことはデザインのプロセスで避け難く、結果的に何かに似てしまったということはありがちだ。見て模倣したのではなく、記憶の引き出しに残っていたものが甦ってしまった、とでも言おうか。トールキンさんのシンボルとか、複数の文字を重ねてシンボル化する手法は欧米では珍しく無いわけで、似たようなものをどこかで目にしていない方がおかしいぐらいではないか。

ただ、そう考えつつ、どうにも気持ちが悪いのは、東京五輪のエンブレムの右下の部分が何なのか、だ。
デザインの要素としてあれは何なのか、何故あるのか、不要ではないのか、と、どうにも腑に落ちない。影なのか、あるいは「L」だと言われればナットクできるがそれは「Olympic」の2文字目の「L」なのか。あれが無ければ「T」と「L」を組み合わせたロゴに似ているなどという、こんなトラブルは起きなかったのではないか。と、無駄に悩んでいる。

掲載にあたり権利関係の問題あればご指摘ください。
「T」以外のアルファベットも全て作ってあるのですとのことで後から発表されたが逆効果。「T」以外の完成度が思いのほか低く、しかも「T」の右下にあるような装飾(?)は他の文字には無い。四角と円を組み合わせて、円によって切り取られた切片だと、そういう説明があって、それはなるほど分かりました。では「T」以外のアルファベット25文字 と0から9までの数字、幾つかの記号、そこに、「T」にあるような、文字自体を構成しない切片が全く見つけられないのは何故でしょうか?と、なおさら、言葉は悪いが胡散臭く感じられる。あの劇場のロゴをパクッたわけではないにしても、何か後ろ暗いことがあるのではないかと、勘ぐりたくもなる。

そんなことを考えているうちに、過去の作品にもパクリがあったとかなんだとか、話がどんどん大きくなっているが、決定的なのは、サントリーのトートバッグに使ったフランスパンの写真だろうか。
外形だけでなくクープの形や位置が完全に一致しているこの写真は、個人のブログから無断で採られ、加工されたものと推定されている。
こっちに関しては事務所のスタッフにコンプライアンスの意識が欠落した子がいたとか、そんなオチではないかという気もするし、五輪の件とは関係ないような気もするが、このあたりの疑惑にも早く答えないと、競技場問題と合わせて日本は世界にとんでもない醜態を晒す事になる、いや、もうなっているのか?

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