オーディオテクニカの廉価BAイヤホン、ATH-CKB50。

カナル型のイヤホンには、ダイナミック型とBA(バランスド・アーマチュア)型がある。ダイナミック型と言うのは、スピーカユニットの小さいのが入っている様なもので、BA型と言うのは大体箱のような形状のユニットなのだが、磁力で板を振動させる点においては変わりない。補聴器に用いられていたもので、小さく出来る点が大きなメリットで、解像に優れて繊細な音が出るものの、低音の出はダイナミック型の方が有利だ。と、言うのが一般的な基礎知識だ。
過去、実際にBA型の機種を試聴してみても、どうにも音が細くて遠くて、確かに低域は弱くて、食指が動かず、ドライバーを複数積んだマルチウェイのものなら低域は出るものの価格的に手が出しにくい上に筐体が大きくなって違和感があるものだから、これまで選択肢に入れることさえあまり無かった。
しかし使ってみたいという気持ちはあり、最近、手持ちの中では、MDR-XBA70はメリハリが効き過ぎ、TH-EB900はクリアさが物足りないなどと感じるようになってきたので、今一度BA型に注意が向き、候補を選び始めた。

まず、めがねをかけている所為か、所謂「シュア掛け」がどうにも性に合わないというか気持ちが悪いので、「シュア掛け」が前提の機種は選択肢に入らず。いつものように、通勤電車の中で圧縮音源を聴く用途であるから、価格的にもあまり高いものは買いたくない。
となると、あまり候補は多くない。
SONYの低価格BAは以前試聴して全く好みに合わず、今回も後継機を試聴して全くダメだった。ZERO AUDIOのものも以前試聴してダメだったので、店頭に並ぶ中で残るのはオーディオテクニカのATH-CKBシリーズ2機種ぐらいしかない。



そのうち、上位機種のATH-CKB70に期待していたのだが、さて、手持ち機種と比べての感想は以下。ATH-CKBシリーズの2機種は、念のため複数の展示品を試聴している。イヤーチップはオーディオテクニカのファインフィット、Lサイズ。

SONY MDR-XBA70
PROS
・相当メリハリの効いた音。量感ある低音。中高域も出る。
・能率高く音量は得やすい。
CONS
・ソースにより刺激が強すぎることも。
・筐体の重量バランス(耳から飛び出る部分が大きい)と平型コードの所為か、引っ張られる感あり。重く感じる。

TDK TH-EB900
PROS
・低音良く出る(締まりはあまり良くないが)。
・棘の無い音。弦など心地よい。
CONS
・中高域はそれなりで、ソースにより曇り、詰まりも感じる。
・タッチノイズが大きい。


AUDIO TECHNICA ATH-CKB50
PROS
・スペック(20~15kHz)よりも全域のバランスは良い。カマボコ。
・BA型らしい艶と言うか、中高域の煌びやかさ、抜け感はそれなりにある。
・耳への収まりが良い。
CONS
・前述の2機種よりも低域の量は明らかに劣る。
・コードスライダーなし、ポーチもクリップもなし。

AUDIO TECHNICA ATH-CKB70
PROS
・?
CONS
・エコーがかかったように聴こえる。数年前BA型を試聴した中に、こんな感じのものがあったが。
・低域はCBK50と大差なく、楽器が増えてくるとCBK50よりも埋もれて目立たなくなる。中域あたりに大きなピークがあるのだろうか。
・筐体が大きく、外耳への圧迫感がある。収まりの悪さが音に影響?

CKB70は残念な感じで、結果、70の売価半分以下のCKB50を購入してみた。3,000円台前半と、いくら安いほうが良いとは言えこの価格帯のものを買うとは思っていなかったが、なかなか良さそうだったのだ。コストダウンのためか付属品はイヤーチップだけという簡素な商品で、筐体はそこそこよい質感だがケーブルはやや太めで安心感はあるものの安っぽい。しかし、BA型特有の箱型ユニットをうまく配して外耳への収まりが良く、出てくる音も価格以上にバランスが取れていると感じる。
エージングもせずにミヒャエル・ギーレン指揮のマーラーの交響曲第7番を聴いたら、オーケストラの音色に艶が増しつつ、聴き疲れしない適度な強さで、なかなか小気味良い。

コメント

人気の投稿