ローレンス・ブロックの殺し屋シリーズ、「殺し屋ケラーの帰郷」。

殺し屋稼業から足を洗い、もう裏社会には帰ってこないだろうと思っていたケラーが、戻ってきた。



前作で色々なものを失い、しかし結果的に新しい人生を手に入れたはずのケラーが、殺し屋稼業に復帰する、その切欠と、その後のいくつかの仕事が、例によって淡々と描かれる。ただ、これまでとは違って、心が振れることが多くなったように見える。スカダーもそうだが、ローレンス・ブロックが描く主人公は、実際の我々がそうであるように、歳をとり、内面的に変化していく。ケラーは確かにケラーなのだけれど、以前と全く同じではないのだ。
しかし、シリーズの面白さは変わらないし、いつもどこかに漂う清清しさ―殺人と言う特殊な仕事ではあるがケラーにとってそれは生業であり、彼は彼の仕事をしているだけであって、そこには熟達した職人が傍目には恐ろしく難しい技術を日々淡々と駆使しているような潔さや気取りの無さがある―は、やはり残るのだ。
そして、できることならまた続編を書いてほしいと思える、後を引く終結。

知らない誰かであったとしても、事前に内容を知らない方が楽しめるだろうから、あまり物語には触れないでおこう。

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