ジュリーニとスウェーデン放送響のマーラー第9番。

カルロ=マリア・ジュリーニのマーラーと言えば、1976年、シカゴ響を振った9番が名盤の誉れ高く、実際聴いてみると素晴らしいもので、私が9番のベスト10を選ぶなら上位に入るだろう。



2年前に聴いた感想はこうだった。

第一楽章は30分を超えており、明らかに長い。そして、聴き始めると、やはりゆったりとしていて、これは時間がかかるわな、と言う印象。ゆったりとしてはいるが、単に穏やかと言う感じではなく、各パートがしっかり主張しつつ絡み合っている。ショルティとシカゴ響のマーラーのような、力強いが硬質な感触とは異なり、柔らかだが芯は強いと言う感じ。そして、同じゆっくりでもマゼールの様に耽美的ではなく、ガチャガチャしたところが適度に残してあるというか。確かにこれはなかなか凄いと、思いはじめた。
そして第二楽章、これもやはり遅め。1番のときに感じた古典派の曲をやっている様なまとまった落ち着きはなく、遊びを感じる。といっても、バルビローリ指揮ベルリンフィルのあれほどではない。
第三楽章も同様だが第二楽章よりは少し引き締まった、襟を正した雰囲気となる。そして後半、終楽章の主題が現れるあたりの美しさは目を瞠るものだ。そして終楽章、低音弦等がしっかりと響いて線が太く、しかし柔らかなので優美さは損なわれない。よく歌いよく響く豊かな9番だ。どちらかと言えばもう少しストイックで枯れたものが好みだが、これはこれで素晴らしい。

この名盤の3年前に行われたスウェーデン放送響とのライヴが、WEITBLICKレーベルから発売されている。



WEITBLICKはちょっと毛色の変わったディスクばかりリリースするレーベルで、ものによっては佐村河内事件で注目された許氏がライナーノーツをしたためていたりするのもあまり好ましいと思えない―許氏にエセーを連載させていて、佐村河内事件からしばらくは連載を止めていたが、ほとぼりが冷めたと思ったのか再開したHMVのオンラインショップからは何も買わないことにしている―けれど、久々に9番を追加したくなって取り寄せてみた。
まずは、ホワイトノイズが大きい。弱奏部では非常に耳につく。演奏そのものは、なるほどジュリーニらしいゆったりとした、振幅の大きなもので悪くない。だが、音がいまいちだ。艶が無いというか。
第二楽章は、多少賑やかになるので緩和されるが、それでも不満は解消されない。第三楽章も同様。こうなると、終楽章の序盤などかなりつらいことになりそうだが。

その終楽章、ノイズは心配したほどではなかった。ジュリーニらしい、いや、いつにもましてゆったりとしたものだ。テンポが遅すぎるのか、ここまでに疲れてしまったか、管の息が続かない。弦もややたどたどしい。それなのに、さらっと流れて、いつの間にか終わっている。

オケの力量に差があるのは仕方ないとしても、音もあまりよろしくなく、正直に言ってシカゴ響とのセッション録音に並ぶものではない。あれがあれば無理にこれを聴く必要は無いと言えるだろう。ジュリーニファンのコレクターズアイテムかな。

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