イアン・ランキンの「監視対象」。

スコットランドを舞台にした警察小説、リーバス警部もので親しんできたイアン・ランキンだが、ハヤカワ文庫で発売されることがすっかりなくなり、忘れかけていたところへ、新潮文庫から別の主人公をフィーチュアした新刊が発売された。今年の4月のことで、予約段階で注文していたにもかかわらず、色々と未読の本があって、半年経ってようやく読み始めることができた。



主人公はマルコム・フォックスと言う、内部監査に従事する警部補だ。
とある署の刑事を告発し、裁判が進んでいる状況で、同じ署の別の刑事に対しても疑惑が生じ、操作の依頼を受ける。並行してマルコムの妹のパートナーが事件に巻き込まれ、その事件を担当するのが、なんと、その刑事であり、その上役は、仲間を告発したマルコムに強烈な敵意を抱いている。
なんとも頭の痛い状況だ。リーバス警部ものでもそうだったが、ランキンは、主人公を苦境に追い詰める。捜査に行き詰るとか、犯人の方が一枚上手で苦労するとか、それこそフロスト警部ものの様に事件が多すぎて手が回らないとか、どの警察小説でも主人公は苦労するものだが、ランキンの与える苦労は、仕事と割り切れないしんどさがあって、読み進めるのがしばしば重たい。
まさにハードな作風と言えるだろう。

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