バルシャイのショスタコーヴィチ全集から、6、7、8、9番。

例えばヴァーツラフ・ノイマンとチェコフィルハーモニー管弦楽団のショスタコーヴィチだと、9番は文句なしに楽しく、素晴らしい。7番が、個人的には好きだが、戦争交響曲としての7番らしさを考えると、別物になってしまっているようにも思う。
一方で、ロジェストヴェンスキーの全集なんかだと、旧ソヴィエトの演奏だなあと感じる強さ、激しさなどあって、ショスタコーヴィチはこんなふうに演奏されるものだったのだろうとは思うけれど、個人的には耳に痛く、耐えられない場面がしばしばある。



そうした個人的なバランス感覚からは、やはり、ベルナルト・ハイティンクの全集が、よい意味で中庸であり、よく出来ていると痛感する。そして、このバルシャイの全集にも、同じ印象を抱いている。



6番は、頭でっかちな第一楽章の不穏、不安な気配をじんわりと引き出しつつ、その後の楽章での転換、そして、終楽章のスピーディなクライマックスなど、非常に高い高揚が得られる。
7番は、丁寧ではあるが、やはり頭でっかちな第一楽章を、破綻しない程度にではあるが大きく鳴らし、ひたひたと迫り寄る戦争の恐怖を描く。後半は少し綺麗にまとまり過ぎているかも知れない。
戦争交響曲の第二弾である8番も、迫り来る恐怖、不安、暴力の不気味さを丁寧な演奏の中で、確りと導き出しているだろう。
9番はもうすこし羽目を外した感じでもよいと思うが、カッチリとした出来ではある。



ケルン放送響の腕の確かさもあるだろうが、非常にいい全集だ。少し生真面目で誠実すぎるかも知れないが。

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