デュトワとモントリオール管弦楽団のショスタコーヴィチ、第5番と第9番。

シャルル・デュトワはNHK交響楽団との関わりで日本に馴染み深い指揮者であるが、我が家では昔、独墺系以外の現代に近い作品と言えば、何となくデュトワとモントリオール管を選んでおけば大丈夫と言う妙な固定観念のようなものがあって、バルトーク、ラヴェル、ビゼー、ドビュッシーあたりのCDは皆このコンビの録音を買っていた。1990年代後半ぐらいだったろうか。
ショスタコーヴィチの録音があることは知っていたが、気づいた時には入手困難になっていた。それが、タワーレコードの企画で復刻されたのは喜ばしい。予告の段階ですぐに予約を入れた。

ショスタコーヴィチ: 交響曲 第5番, 第9番<タワーレコード限定>
Charles Dutoit, Montreal Symphony Orchestra

9番から聴いたのだが、妙に音が小さい。そういえばデッカのデジタル録音には、ダイナミックレンジの広さ故であろうか、弱奏部分が妙に聴こえにくい録音がしばしばある。第4楽章以降、それなりの音量音圧で響き渡る場面はあるのだが、序盤はちょっと抑えすぎではないか。演奏そのものは非常にまとまりよく統制の取れたものなのだが。
そして5番だが、これは大当たりだ。純音楽としての5番を突き詰めたらこうなると言う模範解答のひとつではあるまいか。例えば第一楽章後半の二つの主題の破綻ぎりぎりのせめぎ合いはアンチェルとチェコフィルを想起させるが、モントリオール管にはチェコフィルの如き甘美さは無いので非常に客観的で理知的に響く(裏を返せばやはりアンチェルは理知的なスタンスの指揮者であったのだろうかと、判ったような気になる)。終楽章冒頭も急ぎすぎず落ち着きすぎず、コーダは力強いが感情的な爆発とは無縁だ。録音面で気になるところも無く、けちをつけるとすれば、きれいにまとまりすぎているとでも言うしかない。

コメント

人気の投稿