AKGのポータブルヘッドホンK404を買ってしまった。

音楽を聴くのは通勤の行き帰りで、スマートフォンにカナル型のイヤホンまたはヘッドセットを差してずっと聴いてきたのだが、ちょっとヘッドホンにしてみたくなった。
まず、音漏れを押さえるには密閉型が必須条件。出来るだけ軽くてコンパクトなほうが良い。コード長も、ポータブル仕様で短めなもの。そして、電車の中で付け外ししたりすることを考えると、断線やらぶつけて傷が入るやらの恐れがあるわけで、高価なものは避けたいところ。
昔は家の中用にゼンハイザーのオープンエア機HD414を使っていたが、最近はヘッドホンと縁が無かったのでWebで調べて、BEYERDYNAMICのDTX501pを筆頭に、JBLのJ55、ゼンハイザーのPX200-IIなどを候補に挙げて、日本橋でんでんタウンに出向いた。

       

まずDTX501pは、装着感良し、音もなかなかきれい。ケーブルが片出しで、コンパクトに畳めるのも良い。ただし若干音量はとりづらいか。高音は出ているが刺さらず、低域はやや物足りない。ハイティンク指揮のショスタコーヴィチ5番の第四楽章、少しオケが遠く感じるが、これは後で試聴した機種もほぼ同様で、こちらの耳がカナル型イヤホンに慣れきってしまったためだと思う。
迫力は弱いが、弦のアンサンブルなどには向いているようで、ノイマン指揮チェコフィルのマーラーの第9番第四楽章の冒頭など、なかなか美しい。決め手には欠けるが、1万円以下でそれなりの音をうまくまとめていると言う印象だ。

JBLのJ55は、たためるがコンパクトではなかった。電車の中で装着していると目立つぐらいのサイズだ。とは言え、ケーブルが片出しでしかも脱着式と言うのは断線を考えると気が利いた仕様だし、音もパンチが利いていて、ショスタコーヴィチには合う感じ。しかし、残念ながら大きさの点で却下。

PX200-IIは、DTX501pに近いが、こちらの方が音に張りがあると感じた。ケーブルが頼り無さ気なのと、折り畳み機構がBEYERに比べちょっと壊れやすそうと言うか可動部分が多いのが気になった。

このほか、買う気は無かったがポータブルでない機種―SONYの定番モニターとか、BEYERのテスラテクノロジー採用の上位機種とか―あれこれ聴いてみて、どうも自分にはAKGの音が良さそうだと感じた。そして、当初全く候補に上げておらず、偶々目に入ったAKGのK404と言う、価格帯では最低クラスの機種をふと試聴してみて驚いた。

高音の抜けは悪いが、小さいくせに低音が出る。能率も良く、音量はそこそこ取れる。ショスタコ、南沙織、エアロスミスなど聴き、トルトゥリエのバッハの無伴奏の1番を聴く。試聴機は散々鳴らされているだろうからエージングでこれ以上よくなることは無いだろうが、まあ、低音寄りのかまぼこ型で、値段を考えれば悪くない。壊れても、悲しみは小さいだろうし、等と考えていた。
そして何となく曲を送って4番のジーグを聴き始めて、やられた。チェロの厚み、響きの豊潤さ、温もり。こんなチープな機種から、こんな音が出るとは。
売価3,500円、ケーブルは両出しの上、昭和40年代ぐらいを思い出させる灰色の古臭い皮膜に覆われている。ヘッドバンドはむき出しの金属バンドを二重に重ね、申し訳程度にパッドを取り付けた部品をスライドさせて調節するという、ミニマルな、と言うよりコストを削りに削った構造。しかし、装着感は見た目よりは良く、出てくる音はそれ以上に良い。
慌てて4番のジーグをこれまで比べてきた機種で聴き直したが、DTX501pも、PX200-IIも、こんな音は出せなかった。もちろんこの機種では不満を感じるソースも多々ある―同じバッハの無伴奏チェロでも、ジャンドロンだとちょっと大袈裟に感じられたり―だろうが、許せる気になった。これはまいった。

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