マゼールとフィルハーモニア管のマーラー第5番、第6番。

続けて聴いているマゼールのマーラーチクルス。
マーラーの5番については、マゼールとウィーンフィルとの全集録音のものをベストと評価している。常々ウィーンフィルの音は妙に高音弦が耳に刺さるようでありまた変な艶かしさが感じられて好ましくないことが多いのだが、ゆったりとしたテンポで美しく仕上げられたマゼールの5番は特別だった。さて、フィルハーモニア管との5番はどうか。と言いつつ、どうも腑に落ちず、何度か聴き直しての感想を記す。



冒頭のトランペットからして、少し柔らかい。技量的に劣って弱弱しいと言うのではなく、ホールの影響、また、録音レベルの設定の問題か、控えめに響く。
弦が被さって来るところもどちらかと言えば穏やかだ。テンポはゆったり目だろうか。それがそのまますうっと進んで流れていく。
演奏面ではライブゆえに安全運転ということも無いのだろうが、少なくとも録音の面では余裕を持って臨んでいるはずで、ゆえに、ガツンと来るところが余り無いのではないか。しかも、ゆったり目で統制が確り執れている―フィルハーモニア管は至極丁寧にいい仕事をしていると思える―ものだから、尚のこと滑らかに流れていってしまうのだろう。
起伏を感じさせぬまま流れて行くし、アダージェットはか細すぎるし、最後はそれなりに纏まってはいるけれど、語るべきことが余り無い。

6番も同様で、全体的に落ち着いてしまっているのでアルマのテーマやアンダンテ楽章―第三楽章に置かれている―は美しいのだがメリハリが無く、控えめで線が細く感じられてしまうのは残念だ。

指揮、演奏よりは録音の影響の方が大きいと思えるものの、いずれにせよマゼールらしからぬ中庸と感じられてしまったが、ここまでのところ総じて弦は―チェコフィルのように溶け合った甘美なものではないが―美しく、9番、あるいは全曲演奏に含まれているのか分からないが10番アダージョあたり良さそうな気がするのだが。まだ見限らずに次のセットのリリースを待とう。

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