マゼールの新しいマーラー全集にかかる前に、バイエルンとの「大地の歌」を。

昨年後半だったか、マゼールがフィルハーモニア管と取り組んだマーラー・チクルスのライヴ盤が発売された。まずは、第1~第3番のセット。ライヴ盤が苦手なので様子を見ていたが、なかなか評判がよく、拍手がカットされているそうで、それならばと、入手した。この5月には、第4~第6番のセットがリリースされるので、それも予約してある。

それに取り掛かる前に、長く聴きそびれていたマゼールの「大地の歌」を聴く。マゼールは、モノラル時代に2種、そして2000年にバイエルン放送響と録音している。ウィーンフィルとのマーラー全集では「大地の歌」は録音していないので、このバイエルンとの録音が、マゼールの「大地の歌」としては現在のところ定番となるのだろう。
以前から目をつけていたが存在を知ったときにはすでに店頭で見かけなくなっており、ECサイトでも在庫が無いことの方が多かったが、最近1枚だけ残っていたりするのを見かける様になったので、無くならないうちにと取り寄せた。



女声はヴァルトラウト・マイアー、男性はベン・ヘップナー。
30年ほど聴いてきた―といってもその2/3ぐらいはワルターとコロンビア響のものだけだったが―冒頭のホルン、速過ぎず、粘っこくも無く、意外と穏当で端正だ。ベン・ヘップナーの歌唱はちょっと遠く感じたが、第一曲ではそのように聴こえるケースが多いので、そういうバランスなのだろう。後の曲ではそんなことは無く、きりっとした張りがありながら余裕も感じさせる丁度いい塩梅の声で、軽やかに歌い上げている。
マイアーも良い。終曲では、音程低め、声量抑え目の箇所で弱みを見せる歌唱がしばしばあるが、無難に乗り切る。女声らしい柔らかさの中に強い芯があり、乱れない。
そしてオケが、どうも、歌唱を引き立てるべく一歩下がっているように聴こえる。暗いところから一瞬キラリと光るような冴えは、演奏にも録音にも感じられるが、終始スポットライトは歌手に当てて、暗がりで支えているように聴こえる。
したがって、「大地の歌」を管弦楽伴奏つきの連作歌曲としてみると、清明で立体的な録音も良く、ファーストチョイスにふさわしい名盤ではないかと思う。
一方で、マゼールの押し出しの強さ、アクの強さは、ここには無い。ただしそれは、枯れたとかでなく、例えばツィンマーマンやマとの協奏曲録音などの場合と同様に、ソロを立てる形式の曲には無い、と言うことなのではなかろうか。

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