マゼールとフィルハーモニア管のマーラー・チクルスから第3番を。

ロリン・マゼールは1980年代にウィーンフィルとマーラーの全集録音を残した。1930年の3月生まれだから、50台、指揮者としては脂の乗り切った時期だろうか。
そしてその全曲を録音し終えてから22年経ち、2011年、かつてオットー・クレンペラーと素晴らしいマーラー演奏を残したフィルハーモニア管弦楽団と組んで、全曲演奏を行った。そのライヴ録音がシグナム・クラシックスレーベルから発売されており、第一弾は第1番、2番、3番のセットだ。前の全集では、2番を除いてマゼールらしいアクの強さはあまり感じられなかったものの、とは言え度を越したと言いたいほど耽美的なもので、それはそれでマゼールらしい“普通では無さ”を湛えていたのだと思うが、今度はどうだろうか。




何となくだが3番から聴くことにした。抑制の効いた立ち上がり。ホルンは雄雄しいがそれほど派手でも威圧的でもない。ダンダンと来るところも同様で、ライヴゆえの丁寧さなのか。尤も、フィルハーモニア管の録音はあれこれ聴いて来て、そもそも比較的かっちりとして羽目を外さないところがあるから、マゼールが指揮をしてもなお、そのあたりは変わっていないのだろう。
録音は良いと言う評判通りで、時々聞こえる環境ノイズが無ければセッションレコーディングだと言われても分からない位だ。
速いとも遅いとも感じないが、その後も丁寧で抑制の効いた演奏が続き、録音の良さと相俟って、特に弦と木管のアンサンブルが美しい。フィルハーモニア管らしい適度に渋みのある音色を含め、好ましいものだ。長大で苦手な曲ではあるが、どちらかと言えばしなやかであたりの優しい音楽ではないか。それに身を任せることで、何とはなしに聴き通せる。それが、この曲らしい演奏かどうかは何とも言えないが。

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