クラウディオ・アバドとベルリンフィルのマーラー9番ライブ。

タワレコでよく行くのは難波店、次いで大阪梅田マルビル店。それ以外の店にはあまり行かないが、そこそこの規模のタワレコがある街に出向いたときは、覗くようにしている。店によって値付けが違ったり、思わぬ掘り出し物があったりするからだ。
先日は京都に出向いたので、あまり時間に余裕が無かったが、タワレコ京都店に寄った。急いでクラシックのコーナーだけ見てみると、アバドとベルリンフィルによるマーラーの交響曲第9番のディスクが特価になっていた。輸入盤だが、プラスティックケースを「MAHLER」と型抜きした紙ケースに収めた贅沢なつくりのものだ。今では同じ録音の薄い紙ケース盤や国内のSHM-CD盤に取って代わられているので、在庫処分だったのだろう。
アバドの録音を、意図して買った事はこれまでに無い。昔は偶々縁が無いと言う程度だったが、ある時NHKで観たマーラー6番の演奏が余り好みで無く、その後手を出さずに来た。しかし、バルビローリ、バーンスタイン、カラヤンと、4種のベルリンフィルの9番を聴いてきて、世評の高いアバド指揮のライブはどのようなものか気にはなっていたし、この1月にアバドが亡くなったこともあって、購入してそそくさと大阪に帰った。

このところ9番は聴いていなかったので、帰途の電車の中では、サー・ジョン・バルビローリ指揮ベルリンフィルによる9番を聴いておいた。どちらかと言えばきびきびとした演奏だ。コンパクトにまとめられるところは確りとまとめて、情感豊かに伸ばすところも情の赴くままではなく適度に制御すると言うか、くどさや冗長さの無い演奏だ。かと言って全く淡白ではなく、ダイナミックで心躍らされる。第一楽章のたゆたう様な揺らぎはいつ聴いても陶然とさせられるし、真ん中の二つの楽章での転換の妙も目覚しい。終楽章だけはもう少し長く続いてくれてもいいんじゃないかとは思うが、兎に角本当に素晴らしい演奏だ。
しかしその後のベルリンフィルの9番、バーンスタインのライブは自分にとっては駄演。カラヤンのはライブもセッションも未消化な感じが残る。さて、アバドのライブはどうだろう。



CD1枚に収まり、ライブだが終楽章の後の拍手を別トラックに分けてくれているほどなので、演奏時間としては速い方だろうか。第一楽章、冒頭からいい感じで、テンポの面ではバルビローリ盤に近いものを感じる。そして、ベルリンフィルらしい統制の取れた構築感、揺ぎ無い安定感はありつつも、オケの大きさは余り感じない。と言ってもスケール感が無いのではなく、引き締まっている。
第二楽章でその印象はさらに強いものになって小気味良く進み、第三楽章に入ると、耳が馴染んできたのか、個々のパートの一音一音が、クリアに、立体的に現れるのが感じられ始める。指揮も演奏も良いが、同時に、録音、ミキシング、マスタリングも秀逸なのだろう。
そして終楽章。ここまで高まってきた楽興が頂点へと向かうわけだが、惜しむらくは、自分には、ゴージャス過ぎると言う気がした。もちろん終結部は、静かに優しく消え入るようなものであるわけだが、ベルリンフィルの持てる力が出し尽くされたのか、全般に厚く、堂々として、圧力が強すぎた。これほど良い演奏をすれば盛り上がるのは無理の無いことで、感動的ではあろうが。

演奏時間を比べてみるとこんな感じだ。

バルビローリ:BPO 26:46/14:51/13:38/22:55/01:18:10
バーンスタイン:BPO 27:38/15:58/12:11/26:08/01:21:55
カラヤン:BPO(1980) 29:08/16:45/13:15/26:53/01:26:01
カラヤン:BPO(1982) 31:07/13:53/12:54/26:48/01:24:42
アバド:BPO(1999) 25:49/14:54/12:19/25:53/01:18:55

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