トム・フランクリンの「ねじれた文字、ねじれた路」。

お得意先を訪問した帰りに書店に立ち寄り、何となく海外ミステリのコーナーを眺めていて、トム・フランクリンと言う作家の、「ねじれた文字、ねじれた路」と言う本を手にした。昨年11月に文庫化されていたものだ。
トム・フランクリンと言う名は聞いたことがない。どうやら邦訳はこの作品ぐらいしかないようだ。



二人の男が主人公で、視点を入れ替えながら、かつ、現在と過去の回想とが入り混じりながら進む。一人はラリー。小さな田舎町で誰も来ない自動車修理工場を開いているが、他者から弧絶して、土地を切り売りしながら生きている。もう一人はサイラスで、警察の助手の様な職に就いている。
二人はかつて、友達同士であったが、色々なことがあって別れた。その後の人生がねじれた路で、ねじれた文字と言うのはアルファベットの「S」、サイラスの頭文字だ。
ラリーは罪に問われなかったが、かつて行方不明になった少女を殺したのではないかと疑われていて、サイラスはその事件の後街を出ていたが長い時を経て戻ってきて、今また新たな少女が行方不明になっている。
狭い街で、不器用なオタク気質の若者が身の潔白を晴らせず数十年疑われ続け、新たな事件でも疑われている。かつてわずかな間だが友であったサイラスが、彼を救うのか、あるいは裁くのかが物語のポイントになるが、起こる事件は小さなもので、犯人やその動機を追う要素もほとんどない。二人の男の別れと再会をほろ苦く描いた佳作、と評価しておこう。

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