マゼールとクリーブランド管、ベルリンフィルの「シェヘラザード」。

ロリン・マゼールのクリーブランド管弦楽団時代の録音は、SONY、テラーク、デッカ、グラモフォンと、複数のレーベルから発売されていた。すぐに思い出せるものでは、ムソルグスキーの展覧会の絵はテラーク、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はグラモフォン、リムスキー・コルサコフはデッカ(というか当時の国内盤では「London」レーベルだったか?)だった。それだけ注目される指揮者だったのだろう。

そのうちの、リムスキー・コルサコフの一連の録音が、オーストラリアのeloquenceレーベルから発売された。eloquenceはユニヴァーサル系列の廉価レーベルだが、オーストラリアでは独自に、かつてのデッカの録音から特定の指揮者と作曲家の組み合わせをまとめたような2枚組みをよく発売している。
収録されているのは「シェヘラザード」「金鶏」「ロシアの復活祭」「スペイン奇想曲」で、昔のアナログ盤では、「シェヘラザード」で1枚、他の3曲で1枚、別々に販売されていたのを持っていた(今も、「金鶏」以外の3曲をまとめた国内盤CDがあるようだ)。それをCD2枚組みに収め、さらにプロコフィエフの交響曲第5番をおまけに入れている。
「シェヘラザード」は、アナログ時代はマゼールのこの録音を、デジタルになってからはコンドラシンとコンセルトヘボウ管の録音ばかりを聴いてきて、色々聴き比べた経験は無い。元々色彩感にあふれるダイナミックな曲だが、コンドラシンはオケとホールの音色によるところが大きいのだろうが流麗でまろやか、マゼールの方は遠い記憶だがややゴリゴリと力強く押しが強かった様に思う。



11月下旬の発売予定で予約を入れていたら、11月8日に発売日が繰り上がった。先月、ブーレーズのマーラーボックスでも同じようなことがあったが、何なんだろう。
それはさておき、「シェヘラザード」。録音は1977年。
冒頭からどっしり重く力強く、このまま怪獣映画に使えると思える迫力。一転ヴァイオリンソロはしなやかで儚げでありながら切れ味良し。兎に角全編に渡って、各パートの出る退く、強弱が大胆にコントロールされ、いくつかのモチーフがテンポや楽器を替えながら繰り返し現れる、そんな曲の組み立てを、分かりやすくかつゴージャスに表現している。
マゼールにはベルリンフィルとの録音もあるので、今回85年のそれも入手して聴いてみた。概ね同傾向の演奏だが、新しい方が流石に録音が良いので、特に弱奏部やソロパートの美しさが際立っていると感じた。ベルリンフィルの技術を、フルに記録したと言ったところだろうか。
あえて比べればクリーブランド管の方がやや筋肉質で引き締まった印象、ベルリンフィルのほうがより巨魁であり重圧を感じる。いずれにせよこの様なメリハリの利いた劇的な曲はマゼールにとってはお手の物だろうから、どちらもオーケストラの重厚で華やかな面を体感するにはこの上ないお手本のような演奏と言ってよいのではないだろうか。

コメント

  1. 近頃、マゼールのアクの強さにハマっております。マゼールのクリーブランドか、ベルリンフィルか迷っていましたので、とても参考になります。ありがとう。

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    1. コメントありがとうございます。ド素人の勝手な感想ですがお役に立てば幸いです。ベルリンフィルはやはりすごいのですが、快活なクリーブランド時代の方が好みかもしれません。マゼール&クリーブランドでクラシックに入門した贔屓目もありますが。

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