ブーレーズとシカゴ響のマーラー第9番。

ブーレーズの全集から、番号付の交響曲の中で最後にとっておいた9番を聴く。
オケはシカゴ響。巡り会わせが悪いのかショルティ指揮の録音は持っていないが、ジュリーニとの録音が非常に素晴らしかったので、期待感が高い。



録音は1995年だが、この全集の他の曲と同様、見通しが良い、分析的な音作りだ。しかしすかすかしたものにはならずふくらみがある。シカゴ響のマーラーと言う点で見れば、ショルティ指揮の様な硬質な強靭さは感じられないが、余力を持った感じで、全体を通して弦も管も厚く、大らかに響く。
第一楽章は、冒頭からしばらく、ゆったりとしたテンポに少し驚く。ちょうど80分ほどでCD1枚に収まる録音にしては、遅すぎないかと感じる。
第二楽章から第三楽章は、どちらかと言えば速めだろうか、きびきびとした、いいリズム感で進んで行く。
終楽章は淡々としている。もちろん盛り上がる箇所は盛り上がるのだが、力が入り過ぎない感じで、気がつけば終わりを迎える。わずか21分台、これは、カラヤンの2回の録音よりも5分ほど短い。
だが、淡白だと言う印象、あるいは物足りなさが残ったりはしない。速めで、情念の迸りとかパッションのような妙な色づけは無いが、オケの音色が温かく、豊饒で、充実感がある点では、ジュリーニ指揮の録音に通じるものがある。どちらもシカゴ響にしてはおとなしいと感じるかもしれないが、この曲にはそれがマッチしていて、ゆったりと大らかに歌わせるジュリーニ、理知的で丁寧で分析的なブーレーズ、それぞれに素晴らしい。

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