オーマンディとフィラデルフィア管のマーラー、「大地の歌」と10番。

タワーレコードの企画によるCDと言うのがある。Amazonなどで普通に買えるので、タワーレコード限定発売と言うわけではないらしい。手持ちのものでは、SONYから出ているオーマンディのショスタコーヴィチ録音集などがそれにあたる。
そのシリーズで、10月下旬にオーマンディとフィラデルフィア管によるマーラー録音集の2枚組みが発売された。だいたい1曲で2枚組みというのが珍しくないマーラーだが、これは「大地の歌」と交響曲第10番のクック版のセットだ。オーマンディはマーラーの8番のアメリカ初演など手がけており、この10番もクック版の世界初録音だそうだが、現在商品化されているものは余り無さそうだ。オンラインショップなどでは、オーマンディのマーラーはこの10番ぐらいしか見かけない。
そんなこともあって非常に興味深いし、期待させられたが、ブーレーズの全集が届いたばかりだったので、聴くのはそちらを終えてからになった。



大地の歌は66年の録音。歌唱は、女声がリリ・チューカシアンで、男声がリチャード・ルイス。ルイスはフリッツ・ライナーとシカゴ響との録音にも参加しており、張りがありつつ適度に軽やかな歌唱には良い印象がある。チューカシアンはメトロポリタンオペラで活躍した往年の名歌手だが、オペラを見聴きしない私にとってはこれが初めてだ。
さて、1曲目、近年のデジタル録音と比べると抜け感に乏しいが却って厚みのあるオケの音に、何故か少し鼻が詰まったようなルイスの歌唱から始まる。マスタリングかオーマンディの指揮かどちらに依るのか定かではないが、歌唱の強弱の波に合わせてオケの出る退くのバランスが上手く取られているような印象。全般に聴きやすいというか、非常にまとまりの良い演奏、録音と感じた。
3曲目、5曲目など、ルイスの声にはもうちょっと抜けが欲しいが、対してチューカシアンは流石にその名に恥じぬ堂々たる歌唱で、全く危なげない。日ごろ余り注意を払っていない4曲目なども、なかなかいい曲だったのだなあと、目を覚まされた。その反面終曲はわかりやすさ、聴きやすさ故に「告別」と言う標題にしては少し明るくなりすぎた感もあり、とは言えブーレーズの録音などでもどちらかと言えば安らかな終結、救済をイメージさせられるわけで、本来この曲はそういうものなのではなかろうか、妙にくどくどと沈鬱な表情を引き摺るような演奏の方が間違っているのではなかろうかと思ったりもする。

クック版の10番については、と言うより10番そのものについては、いつも余り語ることが無い。そもそも未完の作品だし、後生による補筆完成版と言うものをどう捉えてよいのか、こちらのスタンスが定まっていない。前述のとおり、1965年、世界初の録音と言う記念的なものだが、まあ、こういうものかと。
ただ、この録音は、(現代のリマスタリングに依るところはあるだろうが)年代を考えると非常に音が良く、また、響きが豊かでスケール感が大きく、なかなか聴き応えのあるものに仕上がっていることは間違いない。

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