ピエール・ブーレーズのマーラー第8番、第7番。

ブーレーズのマーラー、3番に続いて8番を聴く。2007年、シュターツカペレ・ベルリンとの録音。
まず感じるのが、やはり録音の良さ。と言っても、最新のもののようなクリアさ、透明感とは少し異なる。それぞれのパートの存在をきちんと聴き取れる分析的なものではあるが、同傾向のDENONのインバルの録音や、CANYON(現在はEXTON)のノイマン晩年の録音などで感じる怜悧さは無く、何だか人肌の体温の様なものを感じる。リアルな空気感とでも言えばいいのか。ブーレーズのスタンスからしてこちらのほうがより分析的、非情緒的ですなわちより温度の低いものになりそうに思っていたのだが、逆だった。
歌唱の入り具合、バランスもよく、歌手陣の力量も安定していて、リファレンスになり得る録音だと思う。ただ、3番もそうだが、ある瞬間の爆発力は乏しい。

7番は1994年、クリーブランド管との録音。
マーラーの全集だと、多くの場合、ひとつのセットの中でも録音時期にはかなり幅がある。これもそうだが、13年後の8番と比べてもそれほど違和感は感じない。やはり、分析的だが消して冷徹ではない、柔らか味を感じる録音だ。
オケの変化による影響も、浅学な自分には余り大きなものとは思えない(若干クリーブランドの方がアメリカのオケらしく中高域、金管の張りなどが増しているような気はしたが、先入観によるのかもしれない)。
とは言え、冒頭のテンポの遅さには驚かされる。2枚組みになることの多い7番で、こんなゆったりとしていながら1枚に収まっているとはどう言う事だろう。後々異常なハイペースになったりするのだろうかと最初は思ったが、だんだんと引き込まれ、特に違和感を感じることもなくいつの間にか終楽章まで導かれた。とは言え、いつもこの曲に感じる茫洋とした印象は今回も変わらず。

3番、7番、8番に対しては、自分の中でスタンダードが未だに確立できていない事もあり、評価することすら難しいのだが、なんとなくブーレーズのマーラー、スタンダードではないにせよ、リファレンスにはなり得るのではないかと感じ始めた。例えばスピーカーの中には、リスニング用とモニター用という分け方がある。前者は何らかの意図に基づいた味付けがあって、後者はソースの音を如何に脚色せずチェックできるかと言う観点で作られる。どうも、後者のような存在なのではないかと思えるのだ。

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