ブーレーズとウィーンフィルのマーラー第5番。

マーラーの作品中でも第四楽章の存在で広く知られ愛聴されているのだろう5番だが、ともすれば7番同様に楽章ごとに変化する容貌を追い続けて、結果、茫漠とした印象が残りかねないとも感じる。ただ、甘美な第四楽章から、明るく幸福感漂いまた最後も賑々しく締められる終楽章への展開は非常に良い流れを作っている。葬送のトランペットに導かれる第一楽章も印象的で、流石に7番よりは遥かにまとまりのある作品だ。



これまではマゼールとウィーンフィルのもの(1982年録音)こそ最上と決め付けていたが、この、ブーレーズとウィーンフィルの録音(1996年録音)もなかなか素晴らしかった。マゼールほど耽美的できめ細やかな感じはしないが、より大らかでふくよかでゆったりとしており、オケの音から豊かさのようなものさえ感じられる。緩急や強弱も予想していたよりはっきりと付けられており、3,7,8番あたりで感じた、ミニマルな、抑制された表現とはかなり異なる。
ゆっくり目の進行のおかげなのか、ウィーンフィルにしばしば感じる耳に刺さるようなところも無く、落ち着いて楽しむことが出来た。これはなかなか良いものに当たった。

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