マゼールとベルリンフィルのラフマニノフ交響曲全集。

マゼールはベルリンフィルの音楽監督になれそうで結局なれず、就任パーティーの準備までしていたのをキャンセルしてベルリンを去ったと言う逸話が残っている。しかし、それ以前にベルリンフィルとの録音はあれこれ残していて、おそらくラフマニノフの交響曲全集はベルリンフィルとの仕事の中での代表作なのではないかと思われる。



録音は1982年~1984年、交響曲3曲に幻想曲「岩」を含めた2枚組だ。
3曲しか無いのでラフマニノフの交響曲全集はCD2枚組になっていることが多く、このセットも同様。ただし、もっとも人気の高い2番を聴いている途中でディスクを入れ替えなくても良いよう配慮したのか、1枚目の頭から収めてある。
まず1番に先がけて書かれた「岩」。確りと統制の取れた、しかし大人しくならない力感のある演奏で、流石ベルリンフィルと言う感じ。続いて1番だが、これはラフマニノフにとっては手痛い失敗作であり、ピアノ協奏曲第2番で賞賛を浴びるまで、作者を失意の底に沈めていたとされる。
失敗の要因としては指揮者の不手際や当時のロシア楽壇の派閥の力学などが挙げられているようだが、短く美しい旋律を散りばめて散りばめてまとめ切れていない印象のこの曲には、確かに聞き終えて後に残るものが乏しい気はする。
3番は余り聴く機会のない曲だが、やや前衛的、現代音楽的な序盤から、最後には映画音楽のようなキレイなまとまりを見せて終わる流れは、ダイナミックであり、面白い。ただ、個人的にはガチャガチャした曲、と言う印象ばかりが残る。
そしてメインディッシュと言うべきか、2番。抑揚を利かせながら、どちらかと言えばどっしりと構え落ち着いた進行。ラフマニノフらしい甘美な旋律が支配する第三楽章が白眉であり一番の聴き所なのだが、ベルリンフィルの力量が発揮されすぎているのか、やや力感に溢れすぎているような。もう少し弱々しく柔らかい方がここは好ましいかも知れない。ウィーンフィルとのマーラーの5番ぐらいとろけるように甘ったるくやってくれても良かったが、オケも曲も違うわけで、これはこっちのわがまま、戯言だ。同様の印象で、終楽章は逆に素晴らしいと感じた。

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