オリヴィア・ニュートン=ジョンの「そよ風の誘惑」とか、名曲だけど邦題は出鱈目だ。

すっぽりと記憶が抜け落ちていたのだが、自分の音楽体験の一時期において、オリヴィア・ニュートン=ジョンの存在は大きなものだった。
小学校高学年ぐらいから中学生の間、オリヴィアのアナログレコードをよく聴いていた。
オリヴィアは確か、朝のTV番組、TBS系列だったか、「おはよう720」(だったと思うが自信は無い)でジョン・デンヴァーの曲をカヴァーした「カントリー・ロード(または「故郷へ帰りたい」、原題「Take Me Home, Country Roads」)」が用いられたのがきっかけで日本での人気が広がったと記憶している。その後、映画「グリース」でジョン・トラヴォルタと共演(これはロード・ショーを観に行った)したりして世界的なスターの地位を確立したが、「フィジカル」あたりで雰囲気が変わってしまい少なくとも私は興味を失った。

彼女の作品で最も素晴しいのは「そよ風の誘惑(Have You Never Been Mellow)」で、これはもう、ポップス史上に残る名曲だと思うのだが、他にも「たそがれの恋(Don't Stop Believing)」とか「サム(Sam)」、「レット・ミー・ビー・ゼア(Let Me Be There)」とか良質な楽曲が色々あった。
そう言えば中学2年の時、「Let Me Be There」の意味がよく分からずどう訳せばよいのか英語の先生(日本人だが「ボブ」と言うあだ名だった。失礼ながら本当のお名前は思い出せない)に尋ねて、「あなたのそばにいさせて」という意味だよと教えてもらったことを唐突に思い出した。



で、ふと思ったのだが、「そよ風の誘惑」とか「たそがれの恋」とか、いったいどこからこんな邦題がひねり出されたのだろうか。
「そよ風の誘惑」は、せかせかして自己主張ばっかりしてないで、すこしは落着いて、優しい気持ちになって、周りの人を力づけたりしなさいよ、という歌である。そよ風は吹かぬし誘惑もしない、されない。
「たそがれの恋」は、何でも思い通りになるあなたにも悪い時はやってきて誰もあなたを求めなくなっても、信じることを止めないで、という内容だ。
アーティストのイメージ、透明感のある声から「そよ風」なんて言葉が出てきたりしたのだろう。「たそがれの恋」の方は、「神々のたそがれ」的な、没落のイメージは通じてはいなくもないが、やはりずれているように思える。



妙な邦題で最も突き抜けているのは「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」だろうか。原題は言わずと知れた「A Hard Days Night」で、命名したのはあの水野晴郎であると言う逸話は有名だ。行き過ぎて却って成功した例だが、どうやら最近では使われなくなっているようだ。
これに限らず変な邦題というのは映画でも音楽でも山ほどあるわけで、目くじらを立てるようなことでもなく面白がっていれば良いのだが、「慕情(「Love Is A Many Splendored Thing」)」の様な、簡潔に作品世界を凝縮させた素晴しい邦題もあるわけで、出来れば後者の方が作品にとって幸せだろうとは思う。

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