金庸さんの「侠客行」のドラマが放映されているようだ。

最近なぜか「侠客行」の記事にアクセスが増えていると思ったら、中国で制作されたドラマがチャンネルnecoで放映されている。



necoを視聴できる環境に無いので残念だが、「射鵰英雄伝」あたりに比べたら1/3ぐらいの分量しかないのに40回もあるらしいので、おそらくはドラマオリジナルのエピソードなどかなり盛り込んでいるのではないかと想像され、出来には少し不安を感じる。

金庸作品のドラマ化で、改変がひどかったと言えば、バリー・ウォンが監督したTVシリーズの「雪山飛狐」だ。これは「飛狐外伝」と「雪山飛狐」という、繋がった2作品をひとつにしたもので、そのこと自体は問題ではないのだが、珍妙な改変には怒りを通り越して呆れるしかなかった。
苗人鳳という当代有数の剣客がおり、彼を亡父の仇と疑う胡斐という若者がいる。苗家の剣法に「白鶴舒翅」という技があるが、苗人鳳はその技を繰り出す際に自身気付いていない癖があり、胡斐はそれを知っているので、戦いのさなかその癖が現れれば、次の手を読んで相手を倒せる可能性が高い。そこに至る緊張感が、クライマックスをさらに盛り上げるのである。
しかし何故かバリー・ウォンは、おかしなアレンジを積み重ねて、作品を台無しにしている。

・苗人鳳は、かつての義弟であり、原作でも諸悪の根源の一人と言うべき、しかし腕は遥かに劣る田帰農の一味に囚われ、田に剣法を強制的に伝授させられる。その中で、白鶴舒翅を教える際に隙を持たせ、そのことを記した紙片を隠して死ぬ(原作では、田帰農は苗人鳳にはかなわず、別の出来事で死ぬ。苗人鳳は死なないどころか田に捕まったりもしない。※この項追記:紙片を残したように記憶していたが、調べてみると首に疵をつけたと書いておられるブログなどあり、よく分からなくなってきた。多分こちらの覚え違いだろう)。
・胡斐は紙片を見つけ、苗人鳳のメッセージを受け取る。
・胡斐が亡き両親の墓に参ると、苗人鳳の妻でありながら田帰農の元に走った南蘭がおり、かつて苗人鳳と南蘭が結ばれたきっかけを引き起こした、類稀な名刀が、墓のそばに埋めてあると告げる。
・田帰農が手下を連れて胡斐を襲う。
・戦いの最中、田の激しい攻撃で胡家の墓石が破壊され、何故か墓石が砕けた中から件の名刀が飛び出してくる。
・田は特に白鶴舒翅を使うわけでもなく、当然胡斐はその隙を突くこともなく、名刀によって胡斐は田を倒す。

伏線というか、はっきり描かれている出来事すら、フォローできていない、と言うか忘れているのだろうか。本当に馬鹿である。金庸さんが怒ったと言う「笑傲江湖」の改変なんて、これに比べれば遥かに可愛いものだ。

兎も角、ドラマ版「侠客行」の特設サイトにはまだ余り情報が無いが、つまらぬアレンジで台無しにして欲しくないものだ。主人公である狗雑種の余りに素直で誠実な、故に誤解され難に遭う姿は愛すべきものだし、やがてその愚直さゆえに大いなる宝を得、しかしそれも欲のない者には何の変化ももたらさず、結果、やや尻切れトンボでありながら爽快感漂う物語には、他の金庸作品とも一味違う魅力があるのだから。

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