アンチェルとチェコフィルのストラヴィンスキー、「春の祭典」と「ペトルーシュカ」。

日本コロムビアから発売されているスプラフォンレーベルのディスクには、カレル・アンチェル在籍時のチェコフィルの録音が揃っているが、一時流通在庫が払底したようですっかり見かけなくなっていた。スプラフォン自体がリリースしていたアンチェル・ゴールド・エディションでもほぼ同様のディスクが揃っていたから、マーラーはそっちの輸入盤を買ったりしていたのだが、最近日本コロムビアのシリーズが再び店頭に並ぶようになってきた。
その中に、ストラヴィンスキーの代表作2作、「春の祭典」と「ペトルーシュカ」をカップリングしたディスクがあるのを見つけた。そんなに売れるものではないだろうから、今ある在庫が尽きたら入手できなくなるかもしれず(すでにAmazonやHMVでは在庫が無いようだ)、聴いてみることにした。

アンチェルとチェコフィルの録音でよく聴くのはマーラーの9番、1番、ショスタコーヴィチの5番あたりで、いずれも後のノイマン時代と同様、弦のアンサンブルが美しく、また木管もぬくもりを感じさせる音で好ましい。金管の力強さはノイマン時代ほどではないような気がする。
マーラーはどちらかと言えばスピーディで、淡白と言うわけではないが飾り気の無い、朴訥だが温かいものだ。一方ショスタコーヴィチは、勿論美しく温かい部分もありながら、破綻ぎりぎりまで吹き鳴らさせるようなところや、あまり他で聴かない様なテンポの変化など一癖あって面白い。



まずペトルーシュカを先に聴いて、これはショスタコーヴィチ寄りかなと。どちらかと言えば軽快で可憐な序盤からして、結構パンチが効いている。くどいとか押し付けがましいとかは無いのだが、きれいにまとめようと言う感じがなく、ありのままに音がぶつかり合っている。
春の祭典も同様で、不協和、不調和が忠実に再現されているようだ。ただ、過剰さは感じられない。ライナーノーツに、アンチェルは「情」ではなく「知」の人であると言う評が書かれているが、なるほど言いえて妙だ。
そしてどちらの録音も、そこに、「芸術家の家」のまろやかな残響を帯びたチェコフィルらしい優美さが纏わり付くことで、必要以上にこちらの耳をえぐったり、神経を逆なでしたりすることが無い。無闇に情感を込めたりしない知的なアプローチに、柔和な響きが相俟って、落着いて聴くことができるストラヴィンスキーになっている。

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