「イップ・マン 序章」と「イップ・マン」。

久々にカンフー映画を観た。ドニー・イェン主演、動作導演サモハンの、「イップ・マン」(実はパート2)と、「イップ・マン 序章」だ。
ドニー・イェンと言うと、デビュー作であった「女デブゴン」を、かつてTBSの看板番組のひとつだった「月曜ロードショー」で観たりしているので、接したのは随分昔のことになる。その後、ジェット・リーの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱」での敵役、ツイ・ハークの「新・流星 胡蝶 剣」とかミシェル・ヨー主演の「詠春」の脇役とか、それなりに出演作は観ているが、動きは兎も角顔立ちや表情が主人公っぽくなく、線の細い真面目な脇役か冷酷な敵役に向いた人だと思っていて、加えて主演作の「ドラゴン危機一髪97」をレンタルして観たりしたものの作風もあってかあまり好みではなく、長く良い評価が出来ずにいた。したがって近年の作品は、全く観ていなかった。
最近ファンになったと言う会社の部下に借りた「捜査官X」も、途中までは良い感じだったが、終盤ジミー・ウォングが出てきてナンセンスギャグになってしまい、ドニーが良い悪い以前の評価をせざるを得ず。
しかし、実在の詠春拳の使い手であり、ブルース・リーの師として高名なイップ・マンを演じた作品が、光TVで放映されているとなると、観ない訳には行かない。ただし、どう考えても史実とは程遠いものになっている点は注意が必要だ。


日本に入ったのは2作目が先で、その後、第1作が「序章」と名付けられて輸入されたようだ。
ストーリーの展開は「序章」から、その結末を受けて2作目へと繋がっている。
黄飛鴻の出身地として知られる広東の仏山が舞台。この、武術が盛んなことで知られる町で一旗挙げようと、北部から来た武術家カムが、並み居る武館に道場破りを仕掛ける。あれよあれよと軒並み倒して、仏山で一番強いと言われるイップ・マン(ドニー)のもとへ。
カムも強いがイップには敵わず、この地で武館を開いて儲けようと言うカムの夢は破れる。
時が経ち(この間に日華事変を経ている?)、仏山は日本軍に制圧され、中国人は皆困窮している。町を支配する日本軍の将校三浦はどうやら武術狂いで、部下を鍛え、その相手として腕に覚えのある中国人を招き対戦させている。勝てば米が手に入ることに釣られ、イップの若い友人であるラムも乗り込むが、三浦一人に3人でかかる流れとなり、結果、命を落とす。
その翌日(?)、イップの知人であった武術家のリュウが、前日の意趣返しで日本人3人との戦いを希望するが、敗色濃厚となり降参、しかし舐められたと思った三浦の部下が、リュウを射殺してしまう。それを観ていたイップは激高、1対10での対戦を希望し、10人全員を叩き伏せて去る。
三浦はイップの武術を日本軍に教えさせようと血眼になり部下に居所を探させる。一方、山賊に落ちぶれたカムがイップの知人の紡績工場に目をつけて金をたかりに来るが、ついにイップに倒されて追い払われる。しかし、カムは腹いせにイップの居場所を日本軍に密告、イップは捕らえられる。
武術を教えるよう執拗に迫る三浦に、イップは自分の技が見たければ自分と試合をしろと答え、(武術馬鹿だから)三浦はそれを了承。そして試合となり、まあ、その後の展開は、読める話だ。


2作目は、仏山から逃げたイップが香港へ落ちのびてからの話。
生活のために弟子を募り、やがて入門希望者がやってくるようになるのだが、ある日、弟子のウォンが別の門派の弟子といざこざを起こし、さらわれる。金を持って来いと言われながら手ぶらで迎えに行き、多勢に無勢な中戦い、逃げおおせそうになるが、そこへ敵の親玉であるサモハン演ずる洪家拳の師父、ホンが現れる。
ホンは香港の武術会を仕切っており、試験をパスして組合に入らなければこの町で武館を開くことは出来ないと言う。それを受けてイップは、テーブルの上で線香一本が消えるまでの間、倒されずに戦い続けると言う試験(周りに足を上向きにした椅子が並べてあるので、梅花椿を模したものだろうか)に挑む。猴拳と八卦掌の師父を軽く捻ると、ほかの連中が尻込みする中、ホン師父が名乗りをあげ、引き分けてイップは認められるのだが、「会費を払え」と言うホンの言葉に怒り、結局話はご破算。
香港はすでに英国統治下で、ホンは弟子や家族を食わせるため、武術家たちが安全に生業を全うするため、英国人の警察署長に賄賂を贈っているのだったが、イップにはそれはわからない。
その後は、お定まりの展開だ。中国武術家の演舞のお披露目を見た英国人ボクサーの侮辱に激怒したホンはボクサーと対戦し死亡。イップがボクサーに挑戦し、と言う流れ。
ジェット・リーの「スピリット」に「ロッキー4」を加味した感じで、まあ確かに盛り上がる展開だが、見え見えでもある。
とは言え、こまかい見どころもあって、なかなか面白かったと言うのが率直な感想だ。例えば猴拳の師父は「五毒」のロー・マンだったり、八卦掌の師父は人相の悪いフォン・ハクオンだったり。最初に弟子入りするのが金庸作品のドラマで御馴染みのホァン・シャオミンだったり、1作目から続投のカムを演じているのがファン・メイサンの息子だったり。
最後におさない頃のブルース・リーが入門しに来るギャグがあって、そこもうける所なのだろうが、「李小龍」と名乗ったのが気になった。その頃であれば「李振藩」と名乗るのではないか?と。

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