サヴァリッシュとコヴァセヴィチのブラームス、ピアノ協奏曲集。

マイ・ブラディ・ヴァレンタインの新譜を取り寄せるついでに、先日逝去されたサヴァリッシュさん指揮のブラームスのピアノ協奏曲集を注文しておいたのが届いたので、通勤の行き帰りに聴いてきた。
サヴァリッシュ指揮ロンドンフィル、と言うと、あの素晴しい交響曲全集と同じ組み合わせであるから、それだけでも期待できる。ピアノはスティーヴン・コヴァセヴィチ。この録音のレビューはなかなかの高評価ばかりであるから、なんとかこれまで苦手に思っていたこれらの曲に、少しは馴染めるのではないかと思う。

これまで持っていたのが、バーンスタイン指揮ウィーンフィルとクリスティアン・ツィマーマンによるもので、先日あらためて聴きなおし、やはりどうも好きになれなかった。恐らくはウィーンフィルの弦や金管の音、妙にピーキーで耳に刺さる所為ではないかと思うのだが、それだけでなく、エンジニアリングと言うか、音場のつくりも作為的に感じられた。ピアノの部分を空けて余白にオケを詰め込み、ソロが無い時は真ん中に空白が出来ているような、妙な感じなのだ。
ウィーンフィルの録音は好ましいと感じることの方が少ない(例外はマゼールとのマーラーぐらい)ので、ツィマーマンさんに罪はないと思うのだが、聴いて心地よくないディスクを大事にするのも妙な話で、他にいいものが見つかれば人にあげてしまいたいぐらいだ。



まずはピアノ協奏曲第1番。
EMIの、クリア過ぎない音質が良い感じに働いているのか、それともどちらかと言えば渋めの音を出すロンドンのオケだからか、両方か。堂々とした押し出しはありつつも耳に刺さるところの無いもので、好ましい。もちろん、だからといってピアノのエッジが寝ぼけていたりするわけでは無い。
しかし結局聴き終えて、この曲は、これは勝手気侭な捉え方だが、ブラームスのヴァイオリン協奏曲と同様、独奏楽器が活躍しすぎない協奏曲、裏返せば独奏楽器をフィーチュアした交響曲的なもの、なのではないかと思った。ヴァイオリン協奏曲も、協奏曲を聴きたいと言うときに候補に上がるような曲ではないのだが、この曲も、何かピアノ協奏曲を聴こうか、と言うときの選択肢には入らない。そんなことを再確認させられた。

対して第2番の方は、可憐と言ってもよい作風で、特に後半の軽やかなリズムにキャッチーなピアノが絡むあたりは素晴しい。ブルッフの1番にも通じる、小ぶりだが愛すべき叙情がある。バーンスタイン×VPO×ツィマーマンは、力が入りすぎていたのか、そうした曲の良さをスポイルしているように感じられる。かたやこちらは、力は抜けているが生き生きと瑞々しいピアノ、それを出しゃばり過ぎず確りと支えるオケ。これは同曲異演を聴いて大正解だった。こう言う事があるから、この趣味は果てが無く危険なのだが。

この他に、コヴァセヴィチのピアノ、アン・マレイの歌唱による歌曲が2組収められている(片方は今井信子のヴィオラも入る)が、これも歌唱良し、伴奏良し。良いカップリングだ。

コメント

人気の投稿