クルト・ザンデルリングとベルリン響のマーラー第9番。

クルト・ザンデルリングのマーラーの9番としては、フィルハーモニア管との録音だったろうか、ERATOレーベルの、ショスタコーヴィチの15番とセットになったディスクが良く知られている。それから、BBCレジェンドシリーズの、BBCフィルとのライヴも評判がよい。それらは未聴で、今回聞いたのはベルリン響とのもの。録音は1979年。3枚組みの中の、ディスク1枚に収まっている。



ザンデルリングらしいと言うべきか、見得を切るような演奏ではなく、どちらかと言えば淡々としたものだ。しかし、同じセットに含まれる同年に録音された10番や、82年録音の大地の歌と同様、弦の切れが良く、ただ枯れたものではない。時折、ガシャーン、バリーンと言う、マーラーらしい騒々しさを適度に強調する場面もあって、第二楽章などはそれがうまくはまり、流石にバルビローリとベルリンフィルほどのノリの良さは無いが、きびきびと進んで行く。
第三楽章に来て、それまで余り感じなかったが、やはり速めだなと、ちょっとせかせかした印象を受けた。しかしそれも束の間、終楽章が始まると、気持ちよく身を委ねて、そんなことも忘れてしまう。

通して聴くと、全体的には、やはり速い方だなと言う印象が残る。と言っても無個性で味気ないわけではなく、終楽章など、普通ならレガートを使うところをそうせず刻む様な場面、独特のアクセントも感じられる。ただそれも、軽快な方に作用するので、けして重く濃くなることが無い。自分には好ましいが、マーラーに情念の迸りを求める向きにはお勧めできないだろう。

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