クルト・ザンデルリングのマーラー第10番(クック版)と大地の歌。

海外から取り寄せた、ザンデルリングとベルリン響によるマーラー集から、まずは10番を聴く。デリック・クックによる補筆完成版だが、10番はアダージョのみのもので十分と思っているのでこれまで補筆版はほとんど聴いて来ておらず、良し悪しを語れるほどには経験が無い。
それでも聴いてみれば、第一楽章はあれこれ聴いていて比べられなくもないし、好き嫌いぐらいは語れるわけで、派手さは余り無いが好ましい演奏であると言い切ることは出来る。
最近聴いてきたショスタコーヴィチなどと同様、このコンビらしく、節度のある折り目正しい演奏と言う印象で、弦も管も丁寧でまとまりが良い。そして、チェコフィルの様な柔らかさはないが、切れが良い。何故か第四楽章あたりで、一瞬ブラームスを聴いている様な気になってしまったのだが、それらしい旋律が出てきてそう思わされただけなのか、ドイツのオケの生真面目な演奏が錯覚させたのか。



「大地の歌」は、女声がビルギット・フィニラ、男声がペーター・シュライアーで、シュライアーの方はインバルのCDで聴いている。ただし、あの録音ではシュライアーの軽快さは魅力的だったものの、どちらかと言うとオケが勝った印象だった。しかしこれまでいくつかの協奏曲で聴いて来た、ザンデルリングの抑制の効いたオーケストレーションから想像するに、歌唱を生かした節度ある伴奏になっているのではなかろうか。
などと想像しつつ聴いてみると、思った以上にダイナミックに、歌手を立てるところ、オケを押し出すところ、曲によって場面によって強弱をつけている。節度はあるが地味に落ち着いてしまわない、なかなかに良いバランス感覚だ。そして、シュライアーはもちろん良いのだが、フィニラが尚のこと素晴らしい。柔らかく、力強い。
歌唱、伴奏とも良い出来で、これまで聞いてきた中でも最上の部類に入る。白眉は告別のクライマックスで、温かく癒されるような感覚に見舞われ、こんな曲だったろうかと、しばし呆然としてしまった。

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