コンドラシンのマーラーを聴く。第3番から。

キリル・コンドラシンは1978年にソ連から西側へ亡命したのだが、ソ連時代には、当局の圧力でムラヴィンスキーが断ったショスタコーヴィチの交響曲第4番や第13番の初演を引き受けるなど、気骨を感じさせるエピソードが残っている。亡くなったのもマーラーの1番を指揮したすぐ後だったそうで、音楽のため、芸術のために身を捧げ、まさにそうして逝った、信念の人だったのだろうと、想像させられる。
その、コンドラシンがソ連時代にレコーディングしたマーラーの交響曲セットがある。1番、3~7番、9番の7曲8枚組で、以前は1万円以上していた。値段もさることながら、Melodiyaレーベルでコンドラシン指揮モスクワフィル(他所のオケとの録音もあるが)というショスタコーヴィチの全集と同じ組み合わせ、録音時期も大体同じであるから、高音が耳に刺さったり強奏が潰れていたりテープの変質がそのまま音に反映されていたり、聴き辛い録音だろうなと想像され、それもこれまで敬遠してきた理由なのだが、最近かなり値が下がってきたので、それなら多少録音がしんどくても我慢できるかなと、取り寄せてみた。



まずは日頃余り好んで聴かないものから片付けようと、第3番から。
このセットの中で最も古い、1961年の録音で、定位がふらつく、潰れる、びびるなど、やはり音はよろしくないが、思ったほどではない。全体的に雄雄しい第一部では、金管が活躍する場面が多いわけだが、さすがにソ連らしく、力強い。少しくぐもった音のおかげか、意外と耳に突き刺さるようなことも無い。しかし、全般に、前に出てきているパート以外はぼやけたり濁ったりで、録音がよければどうだったろうと思わずにはいられない。
第二部は、弦と木管が中心になる穏やかな場面が多く、しばしば録音の古さが強調されるので、なおさら残念さが募る。女性の歌唱にもその影響は及んでしまっている。
そして、歌唱が入る第四楽章、第五楽章のみ、別の録音が追加されている点は特筆すべきだろう。元々の録音はロシア語で、独唱がヴァレンティーナ・レヴコ、合唱はモスクワ国立合唱団、児童合唱団。追加されているのは、ドイツ語で、イルガ・ティクヌセとラトヴィア国立フィルハーモニー合唱団、児童合唱団によるもの。録音は1975年。
こちらは録音良く(といっても最新のデジタル録音に比べればこもったり抜けが悪かったりするだろうが)、この時の全楽章を収録しておいてくれれば、と思ってしまった。

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