コンドラシン最後の演奏、マーラー第1番ライヴ。

ソ連時代のボックスセットで、キリル・コンドラシンのマーラーを聴いてきた。収録されているのは、2番、8番、10番、大地の歌を除く7曲だ。また、少し前になるが、SWRレーベルから出たSWRバーデンバーデン響との6番ライヴも入手している。
コンドラシンのマーラー録音としては、この他に、9番の日本初演(昔から気になっているが、マスターテープがビロビロで冒頭からしばらくは聴けたものでは無いとのことで、買っていない。最近は見かけなくなった気がする)、コンセルトヘボウ管との7番(Tahraレーベルだから放送録音だろうか。7番なので手を出していない)と、北ドイツ放送響との1番ライヴがある。この1番ライヴこそ、楽団と袂を分かったクラウス・テンシュテットの代役としてリハーサルも無しに臨み、指揮を終えたその夜に亡くなったと言う、今や伝説と化しつつある演奏の記録だ。

1981年3月8日の出来事(Wikipedia)

今回入手したこの1番のディスクは、放送用のマスターを基にした正規盤で、EMIの北ドイツ放送響シリーズのひとつとして2004年にリリースされたものだ。すでに廃盤となり流通在庫しか残っていないらしく、タワレコのりんくう泉南店に在庫が残っていたのは幸運だったが、店頭でこれまで見かけた覚えが無いのは何故だろう。



ライヴなので、環境ノイズは結構ある。テープのホワイトノイズもまずまず大きい方だろう。咳もしばしば聴こえるが、流石に旧ソ連のムラヴィンスキーの録音ほどではない。
三連のホルンのところなど、切れ味良く心地よいが、やはり、速めだろうか。リハーサル無しで臨んでも、ゆっくり安全運転ではなく、きびきびと進めて行くのが、コンドラシンらしさだろうか。残響のおかげか音が円やかになっている(逆の見方では濁っておるとか靄っていると言えるだろう)のが、音を硬質に感じさせず、却って功を奏しているように思える。
そういう演奏であるから、第二楽章もさくさくと進み、第三楽章もあっさり目で、あれよあれよと終楽章に辿り着く。北ドイツ放送響といえば、興味が無いので聴いたことが無いがギュンター・ヴァントとともにブルックナーあたり、大規模な交響曲はお手の物と言う印象がある。しかしそれは後のことで、この時点ではヴァントは着任していない。が、流石にドイツの放送局のオケらしく、疾風怒濤の終楽章を見事に盛り上げる。楽章ごとの趣と役割が明快な曲なので指揮も演奏もやりやすいのではないかと勝手に想像するが、そうであるにせよ、終わり好ければ全て好しと言いたくなるクライマックスだ。

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