トレヴェニアンの「シブミ」再読。

ドン・ウィンズロウの「サトリ」を読んで、その後日譚であり原作(?)であるトレヴェニアンの「シブミ」を読み始めた。前に読んでから少なくとも10数年ぶりで、ほぼ記憶に無い。



後日譚と言ってもそれだけではなく、如何にして主人公ニコライ・ヘルが「シブミ」を身につけた暗殺者になったか、その少年期からの成長過程が描かれている。その途中に、「サトリ」で描かれた時期があるのだが、勿論「シブミ」では詳しく語られていない。
作中時間ではすでにヘルは引退しており、現役時代の超人的な事跡は過去の事実として綴られていく。そこに現在進行形のテロ事件が絡み、ヘルに結びつく。
自分に向けられたカメラのシャッターが切られる瞬間の気を感知して動くことで写される像をぶれさせるとか、上級者(?)同士の性行為では手と手を合わせただけの状態でエクスタシーに達するだとか、やりすぎ以外の何ものでもないのだが、それを大真面目にやられると、突き抜けた面白さが生じる。少なくともその点において、これはなかなかの傑作だと感じる。そして同時に、これはもしかすると冷戦時代の世界を舞台に置き換えた「ほら男爵の冒険」の一種なのではないかと言う気もしてきた。

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