山田一雄のショスタコーヴィチ第5番。

山田一雄は故人、今年生誕100周年だ。作曲家でもあり指揮者でもある。第二次大戦と言うか日中戦争中の中国大陸でも指揮をしていたと言うあたりは西の朝比奈隆とも共通するわけだが、兎に角、日本のクラシック音楽における重鎮、功労者のお一人だ。
しかしながら、これまで山田さんの演奏は聴いたことが無かった(N響アワーなどで観た事があるかもしれないが覚えていないので無いといっていいだろう。朝比奈さんも同様だ)。 マーラーの2番など気になるディスクは以前からあるのだが、他に欲しい物もあったりして後回しに。しかし今回、タワーレコードの企画でショスタコーヴィチの5番がリリースされるとのことで、これは、ぜひ聴いてみようと言う気になった。

ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番<タワーレコード限定>

オケは日本フィルハーモニー交響楽団で、録音は1965年。オーマンディのCBS時代の録音がこの年だったはずで、欧米では先例はそこそこあったろうが、日本ではまだまだ馴染みの無い曲だっただろう。と言っても、日本初演が80年代だった4番ほどでは無いだろうが。

さて、冒頭、非常にじっくりと、厳粛な雰囲気で音楽は動き出す。遅い。かなり遅い。しかし緊張感が漲っており、鈍重ではない。行進を経て、二つの主題が狂的にせめぎあい、一転、弦をバックに木管が穏やかな旋律を紡ぐあたり、最も好きな個所のひとつだが、なかなかに美しい。
第二楽章も、第三楽章も悪くない。そして終楽章の冒頭から序盤、ムラヴィンスキーやバーンスタイン的な速い演奏ではなく、西側の純音楽的な解釈に通じる中庸的なスピードで、しかし力強い展開だ。コーダも同様で、しっかりとまとめてくれる。
音質面では、三角形のバランスと言うか、低域がどっしりと落着いている。単に高域が出ていないだけかもしれないが、この重心の低さは魅力的に響く。 残念ながら位相がぶれるような場面、聴き取りにくい部分などところどころにあり、演奏面でもミスは耳につくが、致命的にはならないと感じた。

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