ショルティとシカゴ響のマーラー第1番。

マーラー作品の中で若い頃は1番ばかり聴いていて、歳をとってからはあまり聴かなくなっているのだが、暑い中、爽やかな1番の第一楽章が聴きたくなり、ショルティとシカゴ響の録音を選んだ。レコーディングは1983年。ショルティの1番としては、これ以前にロンドン響との録音があるが、そちらは未聴だ。

 

第一楽章、録音によっては、ボリュームの調節を忘れると、しばらく何も聴こえないことがあるほどだが、この録音はそれほど音量を抑えていない。少し音圧はあげ気味。 しかし、テンポは落ち着いていて、厳粛な雰囲気が満ちる。そこへカッコウが鳴き、牧歌的な木管が加わり、かつてワルターの録音で感じていた、朝の森の中にいるような清々しい気分が高まって行く。
浅学ゆえ技術面での指摘は出来ないが、力量的には全く問題が無いだろう。ホルンの三連発を始め、いたるところ、シカゴ響らしい余裕を感じさせられる。音量を抑えていても、力は伝わってくる。続く第二楽章のワルツも、華やかで軽快ではあるけれど、あくまで折り目正しい。
意外だったのは第三楽章で、冒頭、驚くほど音量が下がる。それこそ、しばらく何も聴こえなかった。そしてその後も、どちらかといえば淡々と進んで行く。この楽章は、葬送ではあるけれど、どこか暢気な風で、けして悲痛に満ちてもおらず、また厳しいものでもない。クーベリックは、そこを卑俗的に描いて見せたが、ショルティは穏やかに、牧歌的とも思える雰囲気を醸し出している。
そして、いかにも交響曲のクライマックスらしい、終楽章。ここはシカゴ響のパワーが全開。これを聴くと、ショスタコーヴィチの5番も、シカゴ響との録音を残しておいて欲しかった、このコンビであのコーダを思想的な背景を無視して純音楽として演奏しきっていたらさぞ素晴しかったろうにと思えてならない。

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