沖雅也の思い出。

特にきっかけがあったわけでもないが、最近、沖雅也のことを思い出す。
最初に強く印象に残ったのは、「必殺仕置人」の棺桶の錠役だった。「仕置人」以前に「キイハンター」に出演していたりしたわけだが、余り覚えがない。
錠は棺桶を作る職人だが、裏の顔は殺し屋。獲物はごく短い手槍で、鏨を分解すると中から尖った穂先が現れ、外した片方、鞘のようになっていた側を穂先があるほうの尻に、柄のように取り付ける。このときねじ込む効果音、キチキチというのが、何とも格好良かった。
この番組には山崎努演ずる念仏の鉄と言う、必殺シリーズでももっとも際立ったキャラクターもいて、そのまねをし続けた所為で普通に指を握るだけでパキパキと音が鳴るようになったほど好きなのだが、棺桶の錠も素晴らしいキャラクターだった。



驚くのは、このとき沖はまだ21歳だったということだ。今も若い役者さんたちは数多いが、ドラマなどに抜擢されるのは事務所の力が強いアイドルなどばかり。あれほどの存在感を持った逸材はまずいない。

その後も「必殺仕置屋稼業」、「必殺からくり人・富嶽百景殺し旅」と、必殺シリーズで好演したが、そういった役どころ以外でも沖は輝いていた。
「青葉繁れる」という学園ものでは、主人公の森田健作とは対照的なクールな役どころ、たしか、東北の高校に転向してきた都会者の役だった。最終回で「初雪だんべ」と訛って、名実ともに仲間になって終りという感じに記憶しているが、こんなことまで(覚え違いもありそうだが)覚えているあたり、沖雅也のことがかなり好きだったのだろう。

「太陽にほえろ」のスコッチ刑事を経て、79年の「俺たちは天使だ」が、ひとつの頂点と言えるのだろうが、個人的には74年のNHKドラマ、「ふりむくな鶴吉」が良かった。若い目明しが経験をつんで一人前の親分になっていくという物語だ。映像が残っていないらしく、パッケージソフトが出ることはないのだろう。非常に残念だ。

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