ロンドン五輪の閉会式。

オリンピックの閉会式、NHKの中継や再放送の評判が非常に悪い。ポピュラーミュージックの歴史に名を残す偉大なアーティストたちのパフォーマンスを流しながら、アナウンサーはろくに的確な説明も入れず、それどころか歌にかぶせて選手たちのコメントを紹介するなど別の話題を喋り捲っていたと言う。
そして、バカッター、もとい、twitter中心に怒りの炎が上がった。しかも再放送では幾組かのアーティストの場面がカットされ、さらに火に油を注いでしまったようだ。

私自身は、開会式にポール・マッカートニーが出ると言うのは知っていたが、「ヘイ・ジュード」と言う、彼の作品の中で自分にとっては全くどうでもいい曲を歌うと知って見ずにいたし、閉会式はどういうプログラムなのか全く知らなかったと言うかそもそも試合以外の式典とかにはあまり興味が無く、内容を確かめることすらしていなかった。
したがって偉そうなことは言えないが、もしプログラムを知った上でTVに噛り付いていたら、ザ・フーやアニー・レノックスのパフォーマンスを邪魔するアナウンサーに怒り狂って、このブログに罵詈雑言を書き散らしていただろう。*ねとか、ぶっ**すとか、f**kとかが、この画面に踊っていたことは間違いない。

会社の先輩格の方がFacebookでそっと悲しみを訴えておられるのを見てさぞやご無念であったろうと思うし、とどのつまり、自分はたまたま見ようとせずにいて見なかったから怒らずにいられるだけなのだが、敢えて中立的と言うか、怒ってる人たちから距離を置いて考えてみよう。

まず、オリンピックで見るべきは競技であって、開会式や閉会式はオマケに過ぎないのではないか。それらの扱いがぞんざいでも、別にいいじゃないか。そんなことより、例えば男子ロードレースが実況も解説も無くストリーミングでしか視聴できなかったことの方が余程残念であり腹立たしいことではあるまいか。他のマイナー競技も然り。ストリーミングが見られない環境の人もいただろうし、ストリーミングすらなかった競技もあったかも知れない。
それに比べれば見られただけマシだろう。そもそもコンサートじゃないんだからアナがうるさかったぐらいで文句言うな

と、別方向から逆切れしてみた。

そもそもオリンピックの開会式や閉会式がイベントとしてクローズアップされるようになったのはいつ頃からだったろうか。ロスアンジェルスかアトランタかどっちだったかもうよく分からないが、アメリカの大会で、ロケットみたいなものを身につけて空から降りてくる演出があったけれど、あれがハシリではなかっただろうか。その後年年歳歳、国力のアピールに加え、放映権ビジネス、スポンサービジネスとして巨大イベントと化してしまったオリンピック。このコンサートまがいの閉会式も、金満イベントの象徴と言えなくは無いだろう。
そのような下世話な仕掛けから距離をおき、頑張った選手たちに焦点を当て直して大会をまとめようとしたNHKの姿勢は、むしろ誠実であったのかも知れない。

と、ちょっと脳内お花畑的だし無理やりだが、こんな見方も、できなくはない。

また、これが他の国の閉会式だったらどうだったろう。ロンドン、イギリスでの大会であったから、歴史をつづるモチーフとしてポップ/ロックミュージックが登場したわけだが、これが例えば韓国での大会で、延々と少女時代やグンソクなどの不気味なライブを見せられたら、あるいは、日本での大会で、AKBとかが延々口パク不揃い踊りを繰り広げたら、どう思うだろう。
こんなパフォーマンスはたくさんだ、コーナーワイプで小さく映しておいて、感動的なメダル獲得シーンの総集編でも流してくれればよいのに、と思うにちがいない
あるいはもっと文化的に縁遠い国で、民族音楽がだらだら続いていたら、あるいは奇祭や奇習が繰り広げられていたら(それはむしろ面白いかもしれないが)、貴方達は同じように怒ったろうか。むしろ退屈な映像をうまくカヴァーしてくれたと、NHKのアナにサムアップしてたりするのではなかろうか。

結局、ロックだから、イギリスだから、レベルが高く名作ぞろいだから、好きな人=頭に来た人が日本には多くて、しかもその中で、何でも確かめたり考えるより先に拡散させてしまうと評判のtwitter民の割合が高かったから、こんな騒ぎになってるだけ。悪い言い方になるが、我侭でしかあるまいよ。NHKはブリティッシュロックやマージービート、ブリットポップのファンのために閉会式を放映しているのではない。それに、開催国の文化を尊重していないという批判があるようだけど、イギリスのロックなんて長く見積もっても50年ほどの歴史しかない大衆芸能なんだ。アメリカのポピュラーミュージック史のように黒人差別や公民権運動と根っこで繋がっていたりと言う奥行きもない。それなら小林旭のダンチョネ節だって負けてないぜ。

と、書いていて段々おかしくなってきたので、逆に怒る側の立場に立ってみる。

サンクトペテルブルク五輪の閉会式、という設定。かつてレニングラードと呼ばれたこの街で、第二次大戦中の攻防を基に作曲された、ドミトリ・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチの交響曲第7番。この偉大な名曲の全曲演奏で平和への祈りを新たにし、スポーツの祭典を締めくくる。
演奏は、地元の名門サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団(旧レニングラード・フィル)。指揮は、常任指揮者ユーリ・テミルカーノフ、だとちょっと地味だから、誰か大物ゲストが来るとして。
演奏そっちのけであーだこーだと大会を振り返ろうとするアナウンサー。どうでもいいマイナー競技の選手の談話まで取り上げて、休む間もない。
ちょ、こら、何やねんこれ。うるさいっちゅうねん。こっからええとこやがな。おい、誰かこいつ黙らせろ。なあ、ちょっと、副音声とかないんか、これ。おい、もうええ加減にせえよ、ほんまに。NHK何番やねん。電話や電話。受信料返せ。タコさんがあの世で泣いとるっちゅうねん、アホ、ボケ。

なんてね。

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