S・J・ローザンの「どこよりも冷たいところ」。

リディア・チン&ビル・スミスシリーズの4作目。
主人公はビルで、規模の大きい探偵事務所を営む友人の依頼を受け、建築工事現場で不正をしているらしい男の裏を取るべく、レンガ工として潜入する。



ビルは昔一時期こうした仕事に就いていたと言う設定で、作業風景が淡々と語られる。抑制されてはいるがしっかりと書き込まれたディテールには、もともと建築家であったというローザンの知識や経験が反映されているのだろう。
また、シリーズの例に漏れず、この作品でも男女や階級や職業、人種などの対比によって登場人物たちの心情や行動規範が描かれていくのだが、依頼人の依頼人である建設会社に施工を依頼している開発業者の社長が黒人の女性で、立場や職業は違えど、リディアが常にそうであるように、それをバネにして生きていこうとする(あるいは、生きていかざるを得ない)者のしたたかさが印象に残る。
ビルとリディアとの関係は、それほど進展してはいないが、パートナーとしての結びつきは一作ごとに強くなっている。

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