S・J・ローザンの「ピアノ・ソナタ」。

S・J・ローザンのリディア・チン&ビル・スミスシリーズの2作目、「ピアノ・ソナタ」。主人公はビルで、リディアはもちろんパートタイムのパートナーとして登場するが、なかなか姿を現さないし、二人の間の微妙な距離感は、前作以上に強く感じられる気がする。



タイトルになっているソナタは、作中でビルが練習しているシューベルトのピアノソナタ第21番・変ロ長調。我が家にはアルフレート・ブレンデルが弾いたCDがあるので、数年ぶりに聴き返して見た。
シューベルトはどこまで行ってもシューベルトで、やはり、深く受け止められないが、小説のほうは素晴らしいもので、中国人女性と白人男性の視点を作品ごとに切り分けながら描ききる力量は素晴らしい。リディアは若さや小柄な女性であることや東洋人であることなど他人が己を規定する様々な枠組みと抗いながら駆け抜けようとする。ビルはこれまでの人生で失ったもの、かけがえのないもの、様々な亡霊にまとわりつかれながら歩き続ける。

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