金庸の「飛狐外伝」。

いつの間にか金庸作品再読プロジェクトのような状態になっているが、そんなつもりではないのでそろそろ終りにしたい。と、思いながら「飛狐外伝」を読み始めてしまった。



この前に読んでいた「侠客行」と同じく文庫3巻だが、こちらの方が一冊ごとの厚みがある。
「雪山飛狐」の"前日談"であり、主人公胡斐の少年~青年期を描いたものだが、多少強引な部分があり、必ずしも二作品はうまく繋がっていない。しかし、絶対に続けて読まねばならないようなつくりではなく、それぞれ独立した作品として読めないこともないので、余り気にしないほうが良いだろう。むしろ「書剣恩仇録」を読んでおいた方が色々と分かりやすいのは困りものだが。

それは兎も角、なかなか悪く無い作品だ。主人公は結構取り返しの付かない過ちを犯してしまう(他の金庸作品では喬峯ぐらいだろうか)のだが、悔やみ、己を戒めて成長していくあたり、金庸作品中でも特に感情移入しやすいと思う。また、武術の習得においては縁あってよい先達から薫陶を受けるが、霊薬やらなにやらで都合よく強くなりすぎるわけではないので、武侠小説に不慣れな人にも受け入れられやすいかも知れない。ただ、味方の側の人々が余りに善人過ぎて、ベタなメロドラマの世界に片足位突っ込んでしまっている点は要注意だ。

読み始めてすぐに、主人公を支える育ての親、平阿四を、バリー・ウォン監督のドラマでは高虎が演じていたことを思い出した。ドラマそのものはつまらない改変もあったりディテールのいい加減さが目に付いてかなり出来が悪かったが、高虎はいい感じだった。この他「神鵰侠侶」のクドゥ、「天龍八部」の虚竹、「碧血剣」の崇禎帝に加え、未見だが「水滸伝」では楊志と、善悪硬軟様々な役を演じている芸の幅の広さにも感心させられる。

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